
2025全日本スーパーモト選手権第7戦レポート
2025年11月9日(日)
美浜サーキット(愛知県)
フルウェットの激戦で全クラスの覇者が確定!
2025年シーズンの全日本スーパーモト選手権シリーズは最終戦を迎え、第7戦美浜大会が11月9日(日)に愛知県の美浜サーキットで開催された。
今季第2戦でも使用されたこのコースは、知多半島の南部に位置する全長約1200mのオンロードサーキット。スーパーモト開催時の特設コースは、最終セクションの手前にかなり長めのダートセクションをプラスするのが慣例となってきた。しかし今大会は朝から本降りの雨となり、路面はウェットコンディションに。土のダートセクションはかなりぬかるみ、これによりダートセクションは短縮された。全日本格式となる3クラスのうちS1オープンクラスは、前戦で鈴木優那(#12)のシリーズタイトル獲得が決まったが、S1プロクラスとS2クラスはこの最終戦でチャンピオンが確定することになった。
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小原堅斗が1点差でタイトル防衛。日浦大治朗が有終の美
全日本最高峰となるS1プロクラスは、2スト250ccマシンで挑む藤田友貴(#19)を除く全ライダーが4スト450ccマシンを駆り、予選は10分間のタイムアタック方式、決勝は10周の2レース制で競われた。14台が出走した予選は、アタックラップ最初の周に、トップと11点差のランキング2番手でこの最終戦に臨んだ日浦大治朗(#2)が、ダートセクションで転倒。このマシンにポイントリーダーの小原堅斗(#1)が接触してクラッシュするハプニングがあった。それでも順調にベストラップを更新して、1分11秒003で決勝レース1のポールポジションを獲得したのは日浦。そして予選2番手には、1分11秒896で金子和之(#5)が入った。この2名のみ1分11秒台で、予選3~6番手は1分12秒台。予選3番手は沖勇也(#18)、同4番手は大金歩夢(#8)となり、ここまでが決勝レース1のフロントローに並んだ。予選5番手は新沼伸介(#6)、同6番手には小原、そして同7番手には1分13秒030で呉本朝也(#12)が入り、ここまでが決勝レース1のセカンドロースタートとなった。なお予選8番手以下は1分14~17秒台で、予選7番手の呉本と予選8番手の藤田は1秒668のギャップとなった。
決勝レース1では、日浦がホールショット。これに沖と金子と小原が続いた。そしてオープニングラップはそのまま日浦がトップでクリアし、沖と金子と小原、少し間隔を開けて大金、新沼、藤田、小鹿翼(#15)と続いた。2周目、トップの日浦は2秒ほどのアドバンテージを確保。沖と金子と小原は接近戦を繰り広げ、3周目には金子と小原が沖をパスして、金子が2番手、小原が3番手、沖が4番手となった。5番手以下はこの3台からすでに大きく遅れはじめ、大金が単独走行の5番手。6番手を走る新沼の背後には、順位を上げた小鹿が近づいてきたが、5周目にミスして後退した。
単独でトップを快走する日浦からやや遅れながら、金子と小原は僅差の2番手争い。4番手の沖はこの2台からやや遅れ、6周目には日浦のリードが6~7秒に拡大し、沖は前の2台から同じく6~7秒遅れた。7周目、それまで金子のマークを続けていた小原が逆転に成功。同じ周、沖の背後には大金が迫った。レース終盤、日浦はトップを独走。そのまま後続を寄せつけずトップチェッカーを受けた。終盤に金子を引き離した小原が2位、金子が3位でゴール。沖と大金の4位争いは最終ラップに入るまで続いたが、沖が順位を守って4位、大金が5位となった。大金から20秒以上遅れたものの、新沼が順位を守って6位となった。
決勝レース1の結果、ポイントランキングでは小原と日浦が6点差に。日浦が優勝した場合、小原が2位ならタイトル防衛、3位なら日浦がタイトル奪還という注目の戦いとなった。その決勝レース2は、再び日浦がホールショット。これに小原、金子、大金、沖、新沼らが続いた。1周目、日浦と小原と金子は早くも4番手以下を約4秒も引き離し、縦に長いトップグループを形成。2周目には3台の間隔がさらに広がった。4番手以下は金子から9秒ほど遅れ、その先頭を走る大金に新沼が迫った。3周目、大きく遅れた4番手争いは新沼、大金、沖のオーダーに。トップ3の間隔もさらに広がった。
レース前半が終わる5周目の段階で、トップの日浦は約6秒のリード。2番手を守る小原に対し、3番手の金子は約15秒も離されていた。さらに遅れた4番手争いの集団は、馬場悠介(#23)と呉本が近づき5台がワンパックに。6~7周目にかけ、新沼と大金が何度がポジションを入れ替えるバトルを繰り広げ、最終的に大金が先行した。レース終盤、大量リードを築いた日浦はややペースを落とし、これで小原が近づいたものの、そのまま日浦がトップでチェッカー。小原が2位となり、これで小原の2年連続3度目のS1プロクラスチャンピオンが決定した。金子は単独走行を続けて3位。レース後半に後続を振り切った大金が4位、僅差で呉本に競り勝った新沼が5位、呉本が6位となった。シリーズランキングでは小原がチャンピオン、日浦がランキング2位、沖が3位、金子が4位、新沼が5位、大金が6位となっている。
●日浦大治朗(レース1・優勝/レース2・優勝/年間ランキング2位)
「シーズンを通して考えると、結局のところ自分のミスが、最後になってチャンピオン争いに響いたと思います。例えば前戦レース1の転倒。あのしょうもない転倒がなく勝てていれば……。そういう積み重ねが、今季のランキング2位という結果になったと思います。とはいえ、前々週にスポット参戦した全日本ロードレース選手権の最終戦では、JSB1000クラスの決勝レース1で3位を獲得。そして全日本スーパーモト選手権でも、最終戦を完全制覇することができ、シーズンの終盤で自分の走りがまだまだ進化し続けていることを感じられました。でもやっぱり、シリーズタイトルを逃したことは本当に悔しいです。いいことも悪いことも、いろいろあったシーズンでした」
●小原堅斗(レース1・2位/レース2・2位/チャンピオン)
「この最終戦を迎える段階で、日浦大治朗選手とは11点差。自分は2レースとも2位でOKという状況だったので、守りに入りたいという気持ちが湧いてきましたが、せっかくイタリアで世界の走りを学んできたのだから、日浦選手から優勝をもぎ取ってチャンピオンになりたいとも思っていました。しかし予選でミスして決勝レース1のフロントローに並ぶことができず、しかもウェットコンディションはやっぱりまだ走りが定まっておらず、レースでの勝利には届きませんでした。それでも、プレッシャーに打ち勝って3度目のチャンピオン。皆さんの応援やサポートがあっての結果だと思うので、本当に感謝しています!」

↑ レース1では混戦の2番手以下を尻目に独走で勝利、レース2でも雨の路面で圧倒的なパフォーマンスを見せつけて独走優勝を決めた日浦大治朗(#2)

↑ 追い上げとなったレース1では着実に順位を上げて2位、レース2ではシリーズタイトル獲得のプレッシャーに負けることなく確実に2位でゴールした小原堅斗(#1)

↑ レース1では、中盤まで小原堅斗(#1)を抑えて3位となった金子和之(#5)。レース2では序盤から2番手に大きく離されたが、再び3位に入賞して2レース総合成績でも3位に

↑ 2年連続3度目のS1プロクラスチャンピオンに輝いた小原堅斗(#1)。今季は14レースで7勝をマーク。最終戦は2レースとも2位でまとめ、1点差で日浦大治朗(#2)を退けた
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新チャンピオンの鈴木優那が2レース制覇!
すでにチャンピオンが決定しているS1オープンクラスには21台がエントリー、20台が予選に出走。シリーズタイトルを獲得したレディースモトクロス出身の鈴木優那(#12)を抑えて、決勝レース1のポールポジションを獲得したのは、スポット参戦したベテラン実力者の三苫進(#49)だった。三苫は1分13秒174、予選2番手の鈴木は1分13秒211の僅差。鈴木と予選3番手は1秒460のギャップで、トップ2が予選タイムの段階で大きく抜け出す結果となった。予選3番手には、こちらもスポット参戦となるモトクロス出身の砂田彰(#48)で、ベストタイムは1分14秒671。1分15秒台はおらず、1分16秒484をマークした福地康祐(#39)が予選4番手となり、決勝レース1のフロントロースタートとなった。予選5番手は1分16秒554の田邉貴裕(#38)、同6番手は1分16秒557の錦織慎一郎(#29)、予選7番手は1分17秒606をマークしたすでに年間ランキング3位が確定している梅田祥太朗(#7)で、ここまでが決勝レース1のセカンドロースタートとなった。
決勝レース1は、三苫のホールショットで幕を開けた。これに鈴木と砂田が続くと、ダート区間で鈴木が先行。しかし最初にコントロールラインを通過するあたりで三苫が並び、2周目の1コーナー進入で抜き返した。その後方では砂田が3番手を確保。福地が4番手、梅田が5番手、田邉が6番手で1周目をクリアした。2周目、鈴木は再びダート区間で先行。3周目の1コーナーでは再び三苫が狙うも、ここは鈴木が抑えた。レース序盤、砂田はトップ2からじわじわと離され、福地を先頭とする4番手争いの3台も砂田から遅れたことで、砂田は単独走行に。3周目、4番手争いでは田邉が梅田をパスし、抜かれた梅田は田邉を僅差で追っていたが、5周目に一度遅れた。
一方のトップ争いでは、鈴木を三苫が1~2秒差でマークし続けていたが、ベストラップタイムでやや勝る三苫がレース終盤に距離を詰め、7周目に入ったあたりから完全な接近戦となった。そして最終ラップとなった8周目には、逆転を狙った三苫が鈴木に肉迫。しかしダートセクションで三苫が転倒し、これで逃げ切った鈴木が優勝、再スタートした三苫が2位となった。砂田は最後まで単独走行を続けて3位。梅田が追いついたことで6周目から再び3台のパックとなった4位争いは、最終ラップに田邉がエンストでタイムロス。これで福地が4位、梅田が5位、田邉が6位となった。
決勝レース1のゴール順位でスターティンググリッドに並んだレース2は、鈴木がホールショット。これに三苫、砂田、3列目8番手スタートだった勝谷仁(#5)、梅田、田邉、川崎雄大(#16)らが続き、ここまでのトップ7はこのままの順位で1周目をクリアした。2周目、鈴木と三苫と砂田のトップ3はそれぞれ約1.5秒間隔となり、接近戦を繰り広げる勝谷と梅田は、縦長のトップ集団から5秒ほど遅れた。3周目には砂田が三苫から遅れはじめ、梅田は勝谷をパスして4番手に浮上。4周目には砂田、梅田、勝谷がそれぞれ単独走行となり、翌周には6番手の田邉も田村賢治(#37)や川崎らの後続を少し離した。
一方でトップ争いは、再び三苫が鈴木をマークし続ける展開に。レース1と比べるとギャップは大きく、5周目の段階では約2.5秒差だった。ところが翌周、バックマーカーに阻まれて鈴木がタイムロスし、これで一気に三苫が近づいて接近戦となった。そして両者がテール・トゥ・ノーズに近い状態で最終ラップのダートセクションへ。ここでまたしても三苫がミスして、鈴木が優勝、三苫が2位となった。レース終盤、3番手の砂田には梅田が約4秒差まで迫ったが、完全に近づかせることなく逃げ切った砂田が3位で、梅田は4位。勝谷が5位、田邉が6位となった。シリーズランキングでは鈴木がチャンピオン、ケガで終盤2戦を欠場した岡田駿介(#10)がランキング2位、梅田が3位となった。

↑ レース1、レース2ともに三苫進(#49)との接戦に競り勝ち、自身のシリーズチャンピオンに最終戦2レース優勝で花を添えた鈴木優那(#12)

↑ レース1ではターマックの1コーナーでインを刺すなど、両レースで新チャンピオンの鈴木優那(#12)を苦しめたが、最終ラップのミスでいずれも2位に終わった三苫進(#49)

↑ 全日本格式のクラスには今大会が初参戦となった砂田彰(#48)は、モトクロスで培ったスキルを滑りやすい路面で発揮して、レース1とレース2ともに3位入賞

↑ シリーズタイトルを獲得した写真中央の鈴木優那(#12)が、2レースを制覇。写真左の三苫進(#49)が両レースで2位、写真右の砂田彰(#48)が2レースとも3位
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伊藤諒がレース1の勝利でシリーズタイトル獲得を確定
10台により競われたS2クラスも、予選は10分間のタイムアタック方式、決勝は8周の2レース制。このクラスは、伊藤諒(#19)が241点でランキングトップ、新井誠(#20)が204点のランキング2番手でこの最終戦を迎えた。なおランキング3番手の五十住洋祐(#23)はケガにより今大会を欠場した。予選では、新井が1分13秒409の最速タイムをマーク。決勝レース1のポールポジションを獲得した。1分14秒958をマークして予選2番手となったのは、スポット参戦した。決勝レース1でのチャンピオン決定が濃厚な状態で挑む伊藤が、1分15秒122で予選3番手となった。予選4番手は1分16秒275をマークした、ランキング4番手の寺平悠成(#14)。ここまでが決勝レース1のフロントロースタートとなり、2列目には真木來人(#21)と水野彰久(#22)と永倉功真(#27)が並んだ。
決勝レース1は、ゲート締め切り時刻に間に合わなかった予選2番手の松村が最後尾スタートに。伊藤がホールショットを奪い、これに新井、寺平、真木、水野、松村が続いて1周目をクリアした。2~3周目にかけ、トップの伊藤は約2秒のリードを確保。新井と寺平が僅差の2番手争い、そこから3秒ほど遅れて真木と水野と松村が4番手争いを繰り広げていたが、真木は4周目に転倒して大きく遅れた。4周目、その前の周からゴーグルレンズを指で拭く仕草を見せていた新井を、寺平がパス。新井はゴーグルを外し、この周に寺平から2秒ほどのビハインドとなった。
しかしレースが後半に入った5周目に、新井は再び前との距離を詰め、これで寺平と新井の2番手争い、大きく遅れて水野と松村の4番手争いとなった。6周目、新井は寺平の攻略に成功すると、寺平を引き離してトップの伊藤に接近。ラスト2周は伊藤と新井による僅差のトップ争いが続いた。そして、最後までポジションを守った伊藤が優勝、新井が2位でフィニッシュ。これにより、レース2を待たず伊藤のシリーズタイトル獲得が決まった。寺平は、ラストは単独走行となって3位でゴール。水野と松村の接近戦は最後まで続いたが、順位は変わらず水野が4位、松村が5位となった。
決勝レース2では、スタート直前になって新井のマシンにエンジントラブルが発生。新井はグリッドに並ばず約半周遅れでピットスタートしたが、マシンは不調のままでリタイアとなった。レースは伊藤が再びホールショット。これに寺平と松村、水野、真木が続いた。オープニングラップはそのまま伊藤が制し、その後方では寺平と松村が接近戦。水野と真木の4番手争いは、すでに3番手の松村から約4秒遅れとなった。2周目にはトップの伊藤が約2秒のリードを確保。2番手の寺平と3番手の松村は約1秒のギャップで、4番手の水野、5番手の真木は単独走行となった。
3~4周目にかけ、寺平と松村の2番手争いは膠着状態となっていたが、5周目に松村が逆転。この段階でトップの伊藤は約3秒のアドバンテージを築いていたが、翌周から松村が、寺平を引き離しつつ伊藤との距離を詰めていった。そしてラスト2周となった7周目には、ついにトップ争いが接近戦に。しかし最後はダートセクションで伊藤が少し引き離し、伊藤が2レース制覇、松村が2位、寺平が3位となった。3位からは14秒近く遅れながらも水野が4位、4~5秒差で水野を追い続けた真木が5位となった。シリーズランキングでは伊藤がチャンピオン、新井が2位、五十住が3位となった。

↑ レース1で、終盤に迫ってきた新井誠(#20)を退けて勝利を挙げた伊藤諒(#19)が、今季最終となるレース2を前にシリーズタイトル獲得を決定

↑ レース1では、ゴーグルトラブルの影響もあり、追い上げも僅かに届かず2位となった新井誠(#20)。レース2は、マシントラブルにより戦うことができなかった

↑ 決勝レース1は最後尾スタートとなり、水野彰久(#22)を攻略できず5位に終わったが、レース2では伊藤諒(#19)に迫る2位となった松村雄太(#28)

↑ 表彰式は2レース総合成績で実施。写真中央が2レース制覇の伊藤諒(#19)、同左が総合成績では2位の寺平悠成(#14)、同右が2位と1点差で総合3位となった松村雄太(#28)
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