2025全日本スーパーモト選手権第6戦レポート
2025年10月12日(日)
名阪スポーツランド(奈良県)
モトクロス方式の横一列スタートを久々に導入!
今シーズンも7戦で競われることになった全日本スーパーモト選手権シリーズ。その第6戦名阪大会は、10月12日(日)奈良県の名阪スポーツランドで開催された。
今季第4戦でも使用された名阪スポーツランドは複数のオンロードコースに加えて、全日本モトクロス選手権も開催されるモトクロスコースなども有する複合モータースポーツ施設。これまでと同じく今大会も、ミニバイクなどの走行用に設けられたオンロードのABコースと、サンド質を特徴とするモトクロスコースのスタート&ゴール付近を未舗装の斜面でつないだ、特設コースで競われた。
ただし、第4戦とはレイアウトを一部変更。まずスタートは、過去にこのコースで用いられたことがある、モトクロスと同様の横一列方式とされた。なお、ここからターマックにあるコントロールラインを通過するまでは、周回数にカウントされない。またターマック区間も、ダートから戻ってきた部分のレイアウトが第4戦とは異なる。
天候は、予選とレース1が実施された午前中が曇り、レース2が繰り広げられた午後は曇り一時雨。これにより午後は、ターマックがウェットコンディションとなったが、水はけの良いサンド質のダート区間にはそれほど大きな影響がなかった。
小原堅斗と日浦大治朗が優勝と2位を分け、11点差は変わらず
全日本最高峰となるS1プロクラスは、2スト250ccマシンで挑む藤田友貴(#19)を除く全ライダーが4スト450ccマシンを駆り、予選は10分間のタイムアタック方式、決勝は9周の2レース制で競われた。17台が出走した予選は、アタックラップ最初の周に金子和之(#5)が1分07秒716をマーク。これが上位勢の目標タイムとなった。予選時間中盤にはランキング3番手の沖勇也(#18)が1分07秒台に入れたが、1分07秒740で金子には僅かに届かず。しかし後半になって、トップと11点差のランキング2番手で今大会を迎えた日浦大治朗(#2)が、1分05秒691の驚異的なタイムでトップに立った。
同じようなタイミングで、ランキングトップの小原堅斗(#1)が1分06秒249をマークしたが、0.558秒差で日浦には届かず。これにより予選トップは日浦、2番手は小原、3番手は金子、4番手は沖となった。予選5番手には1分09秒000の呉本朝也(#12)、6番手には1分09秒208の佐々木啓之(#7)、7番手には前戦に続いてスポット参戦した1分09秒222の長谷川修大(#10)、8番手にはランキング4番手につける1分09秒327の新沼伸介(#6)が入った。予選14番手までが1分09秒台という接戦の状況だった。
決勝レース1では、モトクロス出身の小原がホールショット。これに金子と日浦が続いた。スタート直後の狭いS字区間では、マルチクラッシュが発生。ターマックに設けられた最初のコントロールラインは小原、金子、日浦、川上祥史(#11)、小鹿翼(#15)、増田浩志(#13)、呉本、森田直樹(#20)、藤田、新沼、沖、大金歩夢(#8)、長谷川の順で通過した。フルコースとなった1周目、日浦が金子をパスして2番手に浮上。トップの小原から3番手の金子までが、川上を先頭とする4番手以下を早くも大きく離した。2周目には、3番手の金子が前から4秒ほど遅れ、これでトップの小原と、これを1~2秒差で追う日浦のマッチレースに。川上は金子から10秒ほど遅れ、その背後には呉本、増田、小鹿、森田、沖が迫った。
レース中盤、3番手の金子はトップ2からさらに遅れ、一方で後続に対するギャップも拡大。完全な単独走行となっていった。トップ争いでは、小原を1~2秒差で日浦が追う状況が続いていたが、6周目に両者が接近。ラスト2周となった8周目のダート区間で、日浦が逆転に成功した。ところがその直後に日浦が転倒。これで小原が優勝、転倒からすぐに復帰した日浦が2位、金子が3位となった。4番手争いでは、まず1周目に増田と呉本が小鹿を抜き、翌周には両者がポジションを入れ替え、5周目に呉本が川上をパス。その後に後続を大きく離した呉本が4位を獲得した。一方、川上はラスト2周で後退し、9周目のラストラップは増田と小鹿と沖による僅差の5番手争い。逃げ切った増田が5位、小鹿が6位、沖が7位となった。
決勝レース2は、レース1のゴール順位でスターティングゲートを選択。日浦がホールショットを奪い、これに沖や金子、長谷川、川留健一(#22)らが続いた。レース1勝者の小原はスタートで出遅れ、すぐに追い上げを開始したものの、フルコースとなった1周目を終えた段階でもまだ7番手。この周、トップの日浦は約3秒のリードを奪うと、翌周には約5秒にまで拡大した。一方、2番手争いは縦に長い集団となり、2周目の段階で沖を先頭に金子、長谷川、小原、川留、佐々木、新沼、藤田までの8台が連なる状態。しかし3周目には、沖と金子、長谷川と川留、佐々木と小原、新沼と藤田という2台ずつの順位争いに変化した。
4周目、沖を追っていた金子が転倒し、この周に小原の先行を許した佐々木に次ぐ7番手に後退。翌周、小原は川留を抜き、沖から8秒ほど離されながら3番手を走っていた長谷川に迫った。6周目、小原は長谷川を抜くと、一気に引き離しつつ2番手を走る沖との距離を詰めはじめた。そして8周目に追いつくと、ターマックで逆転。しかしこの段階で日浦のリードは10秒ほどにまで拡大しており、9周のレースは日浦が優勝、小原が2位、沖が3位、長谷川が4位、川留が5位、6周目に佐々木をパスした金子が6位となった。ポイントランキングでは、トップの小原と2番手の日浦がともに優勝と2位を1回ずつ獲得したため点差の変動はなく、最終戦は小原が11点リードで迎えることになった。
●日浦大治朗(レース1・2位/レース2・優勝)
「レース1は、ダートセクションで小原堅斗選手をパスし、このままイケると思った矢先に自分のミスで転倒。非常に悔しいレースになりました。これを踏まえてレース2は、落ち着いて走ることも心がけたのですが、スタートからトップを走ることができ、後ろとのギャップもかなり広がったので、いずれにせよそこまで攻める必要もなく勝てました。動画で研究するなど、ダートセクションの攻略にもかなり取り組んでいて、ライディングスキルもだいぶ上がってきたと実感しています。全日本スーパーモト選手権の最終戦よりも前に、再来週は鈴鹿サーキットで実施される全日本ロードレース選手権の最終戦に参戦します(最高峰のJSB1000クラス)。こちらの応援もよろしくお願いいたします!」
●小原堅斗(レース1・優勝/レース2・2位)
「レース1は途中まで日浦大治朗とのギャップを保てていたのですが、黄旗の影響などで追いつかれました。その後、予想していたとおりダートで抜かれてしまい、落ち着いて走ろうと自分に言い聞かせた瞬間に日浦選手が転倒。なんとか優勝できたので良かったです。レース2はスタートに失敗。パッシングポイントが少ないコースで序盤から日浦選手に逃げられてしまい、まずは2位を獲得することに目標を切り替えました。その2位さえもキツいと思ったのですが、なんとか届きました。これで、ランキングでは11点リードのまま最終戦へ。2レースとも2位でもタイトル防衛は可能ですが、成長するためには2位で満足していてはダメだと思うので、あくまでも優勝を狙っていきます!」

↑ レース1では日浦大治朗(#2)に迫られて逆転を許すも、相手のミスで勝利。レース2ではスタートで出遅れ、パッシングポイントが少ないコースで奮闘して2位の小原堅斗(#1)

↑ レース1では、ダートセクションで先行するも、直後のミスに泣いた日浦大治朗(#2)。レース2は序盤からトップを快走し、完全独走で今季3勝目をマークした

↑ 金子和之(#5)は、中盤から単独走行となったレース1で3位。レース2でも序盤に3番手を走行していたが、転倒後退で6位となった。それでも総合成績では3位を獲得

↑ 表彰式は2レース総合成績で実施。写真中央が同点ながらレース2の成績が優先されるために総合優勝となった日浦大治朗(#2)、同左が2位の小原堅斗(#1)、同右が3位の金子和之(#5)
鈴木優那が優勝でシリーズタイトル獲得を確定!
S1オープンクラスには23台がエントリー、20台が予選に出走。前戦終了時点でトップと14点差のランキング2番手につけていた岡田駿介(#10)は、前日に実施されたスポーツ走行で転倒して膝を負傷し、大会は欠場となった。このクラスは、10分間のタイムアタック予選と、7周の決勝を2レース実施。その予選では、ランキング3番手の梅田祥太朗(#7)が、予選時間前半に1分09秒215のトップタイムをマーク。誰もこのタイムを更新できずにいた。
しかしランキングトップに立つレディースモトクロス出身の鈴木優那(#12)が、終盤に1分09秒100をマークし、0.115秒差で決勝レース1のポールポジションを獲得した。予選2番手は梅田、予選3番手は前半に1分10秒326を記録した佐々木徹(#15)。予選4~8番手は1分11秒台の接戦で、4番手に吉田隆幸(#19)、5番手に藤本賢人(#33)、6番手に田邉貴裕(#38)、7番手に三井正勝(#42)、8番手に福地康祐(#39)となった。
迎えた7周の決勝レース1は、スタート直後に待つ狭いS字区間で混乱が発生し、鈴木がやや出遅れる展開。一方、ホールショットはモトクロス参戦にも力を入れる梅田が奪った。最初のコントロールラインは梅田、吉田、福地、佐々木の順でクリアし、5秒ほど離れて鈴木が5番手。さらに福井章司(#31)や戸田道夫(#27)、藤本らが続いた。フルコースとなった1周目、5番手の鈴木は後続を一気に引き離して、4台だったトップグループに接近。6番手争いとなったセカンドグループでは、藤本が先頭に立った。2周目、鈴木は福地をパス。5番手に後退した福地はこの周に2秒ほど遅れると、その後も前に離されて単独走行となっていった。
一方、佐々木と鈴木は、トップの梅田を2~3秒差で追っていた吉田に近づき、3周目中盤から三つ巴の2番手争いをスタート。このバトルは約2周にわたって続き、鈴木が5周目に鈴木、6周目に吉田をパスして先頭に立った。この段階で、トップの梅田は約3秒のリードを確保。迎えた最終の7周目には、鈴木が僅差で迫ったが、最後のターマック区間を梅田が落ち着いて抑え切り、梅田が全日本初優勝をマークした。鈴木は0.282秒届かず2位。鈴木の先行を許した吉田と佐々木は最終ラップに接近戦となり、ダート区間で抜いた佐々木が3位、吉田が4位となった。単独走行を続けた福地は5位、同じくレース中盤から単独で周回を重ねた藤本が6位となった。
決勝レース1のゴール順でスターティングゲートを選択したレース2は、吉田がホールショット。これに佐々木と鈴木が続いた。レース1勝者の梅田はスタート直後に転倒して大きく出遅れ、必死に追い上げるも最初のコントロールラインを12番手あたりで通過。フルコースとなった1周目、鈴木は佐々木を抜き、吉田と鈴木と佐々木がトップグループを形成した。5秒ほど遅れて錦織慎一郎(#29)が4番手。数秒離れて戸田と大坪正之(#13)が接近戦を繰り広げた。2周目、鈴木はトップに浮上すると、この周だけで約2秒のリードを確保。翌周には佐々木も吉田の攻略に成功し、この間に鈴木は4秒ほどのアドバンテージを築いた。
4周目には佐々木と吉田の間隔も開き、これでトップ3はそれぞれ3~4秒間隔。錦織は、3番手の吉田から14秒ほど遅れながらも依然として4番手をキープし、その3秒ほど後ろには戸田を先頭に梅田や三井ら6台が連なる大集団が迫った。5周目、ここから抜け出した梅田が錦織に接近し、翌周には梅田が先行。一方、梅田に置いていかれてからも、戸田を先頭に5台のマシンは接戦を継続した。レース終盤、トップ3はいずれも単独走行で周回を重ね、レースは7周で終了。鈴木がトップチェッカーを受け、シリーズタイトル獲得を優勝で決めた。佐々木が2位、吉田が3位でゴール。錦織を振り切った梅田が4位、錦織が5位、最後まで僅差で迫った3台を抑えた戸田が6位となった。

↑ 最後は僅差で鈴木優那(#12)から逃げ切り、レース1で全日本初優勝を挙げた梅田祥太朗(#7)。レース2はスタート直後に転倒し、15番手あたりから怒涛の追い上げで4位

↑ チャンピオン争いのライバルだった岡田駿介(#10)がケガで欠場した大会で、レース1は2位、レース2では優勝して、シリーズタイトル獲得を決めた鈴木優那(#12)

↑ レース1では、中盤までチャンピオンの鈴木優那(#12)を抑え、最後に吉田隆幸(#19)を抜いて3位となった佐々木徹(#15)。レース2は、序盤に吉田を攻略して2位

↑ 総合成績による表彰式では、シリーズタイトル獲得を決めた鈴木優那(#12)が頂点に。総合2位には写真左の梅田祥太朗(#7)、3位には同右の佐々木徹(#15)が輝いた
五十住洋佑が連勝。伊藤 諒がランク首位をキープ
10台により競われたS2クラスも、S1オープンクラスと同じく予選は10分間のタイムアタック方式で、決勝は7周の2レース制。その予選は、終盤に上位勢が続々とベストタイムを更新していった。この中で、ライバルに1秒以上の大差をつけて決勝レース1のポールポジションを奪ったのは、第4戦を欠場しながらもランキング2番手につける新井誠(#20)。1分09秒183を叩き出し、同じタイミングで1分10秒400をマークした五十住洋祐(#23)を1.217秒上回った。
五十住に次ぐ予選3番手は、新井と45点差のランキングトップに立ち、今大会の結果次第では最終戦を待たずにチャンピオン決定の可能性がある伊藤諒(#19)。タイムは1分10秒641で、2番手の五十住とは0.241秒差だった。予選4番手は真木來人(#21)で、ベストタイムは伊藤と0.651秒差の1分11秒292。予選5番手以下はトップ4と大きな差があり、予選5番手に寺平悠成(#14)、予選6番手に水野彰久(#22)となった。
決勝レース1は、伊藤がホールショット。これに五十住と新井が続いて、最初のコントロールラインを通過した。真木は出遅れ、4番手は寺平。フルコースとなった1周目、五十住がトップに立ち、新井がミスして遅れ、これにより五十住、伊藤、寺平、水野、新井、真木、上原耕時(#5)の順となった。2周目、依然として伊藤はトップの五十住を約1.5秒差でマーク。寺平はトップ2から4秒ほど遅れ、水野を抜いた新井が距離を詰めはじめた。そして3周目には、新井が3番手に浮上。この段階ではトップ2と4秒ほどのギャップがあった。
3~4周目にかけ、2番手の伊藤はトップを守る五十住との距離を少しずつ詰め、5周目に入る頃には接近戦に。さらに、寺平を離しながら新井がこのトップ2に迫り、3台によるトップ争いに発展した。一方、4番手をキープする寺平には真木が迫り、こちらも接近戦となった。5周目、トップグループの中では新井が伊藤を抜いて2番手に。翌周、3番手に順位を下げた伊藤は2秒ほど遅れ、4番手争いでは真木が先行した。ラストラップとなった7周目、新井は五十住に激しく迫ったが、五十住が逆転のチャンスを与えずそのまま逃げ切り、前戦レース2に続いて優勝。新井が2位、3秒ほど遅れて伊藤が3位となった。真木は最終ラップに転倒し、寺平が4位、水野が5位、真木が6位となった。
決勝レース2は、レース1のゴール順でスターティングゲートを選んだ。直前までの雨で、ターマックはウェットコンディションに。スタート直後、ダートからターマックへの誘導路を真っ先に駆け下りたのは新井だった。これに伊藤と五十住が続くと、最初のコントロールライン通過までに新井が2秒近くリード。五十住は伊藤に肉迫し、その後方は3秒ほど間隔が開き、寺平と真木の接戦となった。フルコースとなった1周目、五十住が伊藤をパスし、新井と五十住と伊藤がそれぞれ2秒程度の間隔で連なるトップグループを形成。寺平はなおも約3秒差で先頭集団を追い、真木は3秒ほど遅れた。
2周目以降、伊藤は前の2台から徐々に遅れ、一方で五十住は新井との距離を詰め、レースが中盤に入る頃にはマッチレースの様相。遅れた伊藤には寺平が迫ったが、両者のギャップは周回ごとに2秒前後で増減を繰り返した。レース終盤、依然として新井と五十住は接近戦。周回遅れも発生した最終ラップのダートセクションで、五十住が新井をパスした。これによりレースは五十住が再び優勝、新井が2位に。両者から大きく遅れた伊藤が3位、数秒差で伊藤を追い続けた寺平が4位、レース中盤に前から遅れた真木が5位となった。今大会の結果、伊藤は37点リードのランキングトップで最終戦を迎える。

↑ レース1では前半に伊藤諒(#19)、後半に新井誠(#20)の接近を許しながら、最後までトップを守った五十住洋佑(#23)。レース2は最終ラップに新井を抜き全日本3連勝

↑ 新井誠(#20)は、レース1では序盤の出遅れを挽回して、最後はトップに僅差で迫る2位を獲得。レース2では、最終ラップに五十住洋佑(#23)の逆転を許して再び2位

↑ レース1では序盤にトップを僅差で追いながらも3位、レース2ではトップ2についていけず再び3位となった伊藤諒(#19)。37点差のランキングトップで、いよいよ最終戦へ!

↑ 2レースとも、トップ3の顔ぶれと順位は同じに、写真中央が優勝した五十住洋佑(#23)、同左が2位の新井誠(#20)、同右が3位の伊藤諒(#19)
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