2025全日本スーパーモト選手権第5戦レポート
2025年9月7日(日)
神戸スポーツサーキット(兵庫県)
全クラスでランキング首位がリード拡大!
今シーズンも全7戦で競われる全日本スーパーモト選手権シリーズ。その第5戦神戸大会は、9月7日(日)に兵庫県の神戸スポーツサーキットで開催された。前戦が、当初予定されていた開幕戦の代替として後で追加されたこともあり、全日本スーパーモト選手権としては珍しく、前戦から2週間後という短いスパンでの開催となった。
昨年9月が初、今回が2度目の全日本スーパーモト開催となる神戸スポーツサーキットは、大阪湾から山を駆け上がった標高約200mの林間にあるカートコース。2013年に開業し、2023年春に延長や拡張などの大規模改修を受け、よりハイスピードなレイアウトに生まれ変わった。
今大会では、全長1045mで幅員8~10mというこのコースをベースに、2コーナーの手前から3コーナーにかけての区間にダートセクションを追加した、特設コースを使用。昨年は降雨の影響によりフルターマックでレース進行されたが、今年はダートも全レースで使われた。路面は朝からドライコンディション。午前中は曇り時々晴れで、雲が厚くなる時間帯もあったが、昼頃からは強い日差しの晴天となり、最高気温32℃の暑い1日となった。
沖勇也選手が最高峰クラスでは自身初の総合優勝
全日本最高峰となるS1プロクラスは、4スト450ccマシンが主流で、今大会は藤田友貴(#19)のみ2スト250ccマシンで参戦。予選は10分間のタイムアタック方式、決勝は10周の2レース制で競われた。14台が出走した予選は、トップと1点差のランキング2番手につける日浦大治朗(#2)が、早々と1分03秒246の好タイムをマーク。これがライバルたちのターゲットタイムとなった。上位勢は予選時間後半にベストラップタイム更新に成功したが、沖勇也(#18)が1分03秒793、前戦でランキングトップに返り咲いた小原堅斗(#1)が1分04秒146、今季初参戦となった長谷川修大(#10)が1分04秒895でいずれも届かず。これにより日浦、沖、小原、長谷川が決勝レース1のフロントローに並ぶことになった。予選5番手は金子和之(#5)、同6番手は呉本朝也(#12)、同7番手は新沼伸介(#6)となった。
決勝レース1では、ポールポジションの日浦がホールショット。沖を抜いてこれに続いた小原が、コース序盤に設けられたダート区間のリズムセクションで逆転してトップに立った。ターマックでは日浦に沖が並ぶも、ここは日浦が抑えて1周目は小原、日浦、沖、長谷川、金子の順でクリア。2周目、このトップ5はそれぞれ約1秒間隔となり、6番手の川上祥史(#11)は5番手の金子から3秒ほど遅れた。3周目、ダートセクションでエンストした金子が9番手まで後退。久々のスーパーモト参戦となる長谷川はペースを上げ切れず、この段階でトップ3から4秒ほど遅れたが、後続に対しては6秒ほどのリードを奪っていた。
レース中盤、小原と日浦と沖のトップ3も、序盤と比べたらやや間隔が広がったが、ここから日浦が粘って、トップの小原を1.5秒前後のギャップで追走。一方、3番手の沖はじわじわと遅れていった。そしてレースが後半に入る頃には3番手の沖、4番手の長谷川がいずれも単独走行に。一方、小原と日浦の間隔はレース終盤になって詰まりはじめ、8周目から再び接近戦となった。しかし最後は、小原が0.160秒差で逃げ切って勝利を獲得。日浦が2位となった。いずれも単独走行を続けた沖が3位、長谷川が4位。一方、5番手争いは5周目の段階で川上の背後に9台が連なる接戦となり、6周目に川上をパスした呉本が5位、ミスによる後退から挽回してきた金子が6位となった。
決勝レース2は、レース1のゴール順位でスターティンググリッドへ。1コーナーは小原が先行したが、切り返しながらダートに進入する2コーナーで日浦がインに並び、ここで両者が接触して激しくクラッシュした。これにより沖がトップに浮上。2秒ほどの間隔を開け長谷川、新沼、金子、川上、大金歩夢(#8)らが続いた。日浦と小原はレースに復帰。最後尾付近からの追い上げを開始した。2周目、大金が川上をパス。しかし3周目のダートで大金が転倒し、これに川上が追突して両者とも大きく遅れた。この周、トップの沖と2番手の長谷川は、それぞれ後続に対して4秒ほどのリードを確保。一方、新沼と金子は接近戦となり、その6秒ほど後ろには日浦と小原が上がってきた。
レースが中盤に入っても、トップの沖はじわじわとリードを拡大。2番手の長谷川も後続とのギャップを保ち、それぞれ単独走行となった。一方、3番手争いは接戦となり、5周目に金子が新沼をパスし、抜かれた新沼の背後には日浦と小原が接近。翌周、日浦と小原が先行し、その直後に新沼はエンストでやや遅れた。7周目、日浦が金子をパス。小原は翌周まで金子を攻略できず、その間に日浦が5秒ほどリードした。そして沖、長谷川、日浦、小原、金子、新沼、最後は新沼に僅差で迫った呉本の順でゴール。レース後、危険行為等による違反の裁定により、日浦選手のゴールタイムに10秒加算のペナルティが課され、レース順位は沖選手が優勝、長谷川選手が2位、小原選手が3位、金子選手が4位、日浦選手が5位、新沼選手が6位となった。
沖勇也(レース1・3位/レース2・優勝)
「総合優勝がうれしくないわけではないですが、自分の中では小原堅斗選手や日浦大治朗選手はライバルだと思っているので、まずはレース1で2人にじわじわと離されてしまったことが悔しいです。レース2に向け、チームの力になっていただいているロードレーサーの國川浩道さんにアドバイスをいただき、なんとしても2人についていき、チャンスがあればパスすることを目標にスタートしました。ところが、1周目の序盤にいきなり両者ともいなくなってしまい、こちらとしても目標が突然なくなってしまったことで、単独でもちゃんと走れるのか一瞬不安に思いました。まあでも、それなりにはちゃんと走れていたようだし、結果としては優勝できたのでよかったと思います」
小原堅斗(レース1・優勝/レース2・3位)
「レース1は、得意のスタートで沖勇也選手、最初のダートで日浦大治朗選手を抜くというプランを立て、そのとおりに実行できました。ターマックのどこで日浦選手が仕掛けてくるのか、ヒヤヒヤする部分もありましたが、しっかり逃げ切れて満足しています。レース2は、序盤に日浦選手と接触転倒。最後尾からちゃんと追い上げられ、楽しいレースができたと思います。来週は、世界のトップライダーが集結するイタリアの国内選手権に挑戦してきます。日本ではカワサキですが、今回は現地のチームにホンダを貸与してもらい、サスペンションなども完全に任せた状態。どこまでやれるかわかりませんが、自分自身と全日本の新たなステップになるよう頑張ります」

↑ 決勝レース1でも、小原堅斗(#1)と日浦大治朗(#2)は激しいトップ争いを展開。レース2では、両者接触転倒という行き過ぎたバトルになってしまった

↑ 今季から全日本最高峰に昇格した沖勇也(#18)。地元の九州ですでにレースでの優勝は手にしていたが、今大会では初の総合優勝に輝いた

↑ 今季はロードレースを中心に活動中の長谷川修大(#10)。全日本スーパーモト選手権には今季初参戦ながら、2レースの総合成績では3位を獲得した

↑ 小原堅斗(#1)と同ポイントながら、レース2のリザルトが優先されるルールにより、今大会の総合成績でトップに輝いた、最高峰クラスルーキーの沖勇也選手(#18)
鈴木優那が再び完勝でポイントリード拡大
19台がエントリー、17台が予選に出走したS1オープンクラスは、10分間のタイムアタック予選と、8周の決勝を2レース実施した。その予選では、前戦でランキングトップに浮上したレディースモトクロス出身の鈴木優那(#12)が、予選時間中盤に1分06秒954をマーク。この最速タイムを塗り替えるライダーは最後まで現れず、鈴木が決勝レース1のポールポジションを獲得した。2番手は、鈴木とし烈なチャンピオン争いを続けている岡田駿介(#10)。ベストラップタイムは1分07秒003で、鈴木とはわずか0.049秒差だった。予選3番手は1分08秒255の大坪正之(#13)、同4番手は1分08秒378の梅田祥太朗(#7)で、ここまでが決勝レース1のフロントロースタート。また、予選5番手は福地康祐(#39)、同6番手は高部充陽(#6)、同7番手は田邉貴裕(#38)で、このうち福地と高部は1分09秒台だった。
迎えた8周の決勝レース1は、予選順位どおりに鈴木、岡田、大坪、梅田のオーダーで序盤に待ち受けるダートセクションに突入。ここで大坪が転倒し、同じワダチの中にいた梅田がストップするなど、後続に混乱が生まれた。大坪はリタイアとなり、3番手には福地、4番手には予選8番手の山口誠(#30)が浮上。後続が混乱したこともあり、鈴木と岡田は1周目だけで5~6秒もリードを奪い、優勝争いは早くもマッチレースの様相となった。2周目以降も、鈴木と岡田は後続を引き離しながら接戦を展開。しかしレース中盤、鈴木が岡田をじわじわと引き離した。
そして4周目の段階で、鈴木が岡田を約2秒リード。ところが6周目、ペースを上げた岡田が鈴木の背後に迫り、ラスト2周は再び接戦となった。しかし最後は岡田が後輪を滑らせて遅れ、鈴木が優勝、岡田が2位となった。一方、最終的にはこの2台に30秒以上離された3位争いは、先頭の福地に迫った山口が3周目に転倒し、レース中盤は福地と薄井保彦(#18)と梅田による接近戦。6周目に薄井を抜いた梅田が福地に迫るも逆転のチャンスは得られず、福地が3位、梅田が4位となった。最終ラップには、この3台を数秒差で追っていた高部が薄井をパス。高部が5位、薄井が6位となった。
決勝レース1のゴール順でグリッドに並んだレース2は、スタートの反応でポールポジションの鈴木が少し出遅れ、これで岡田が先行。ダートの進入では、4番手スタートの梅田がチームメイトの福地をパスした。1周目の上位勢は岡田、鈴木、梅田、福地、三井正勝(#42)、高部、薄井、河野頌二郎(#21)、勝谷仁(#5)のオーダー。すでにトップ2が後続を3秒ほど離し、このギャップは翌周以降も拡大していった。一方、岡田と鈴木の間隔は、2~3周目にかけて1.5秒ほどになっていたが、レースが後半に入ると両者が接近した。
また、3番手の梅田と4番手の福地も、レース前半は3秒ほど離れていたが、後半は福地がじわじわと距離を詰め、さらに三井をパスして順位をひとつ上げた高部が、福地を僅差でマークし続けた。6周目、ダートのリズムセクションで鈴木が岡田をパスしてトップに浮上。抜かれた岡田はターマックで転倒し、これで鈴木のリードが一気に拡大し、これを守り切った鈴木が優勝、岡田が2位となった。梅田は、後続との差をコントロールして3位を獲得。福地と高部の接近戦は最後まで続いたが逆転には至らず、福地が4位、高部が0.511秒差の5位、この2台に離された三井が6位となった。

↑ 2レースとも岡田駿介(#10)との優勝争いとなり、レース1は最後まで岡田を抑え、レース2は得意のダートで逆転して勝利を手にした鈴木優那(#12)

↑ 2レースとも鈴木優那(#12)に迫りながら、あと一歩のところで勝利を逃した岡田駿介(#10)。シリーズランキングでは鈴木に14点のリードを許すことに

↑ チームメイトの福地康祐(#39)と2レースにわたり接戦を演じ、3位と4位を分け合った梅田祥太朗(#7)。レース2で上位だった梅田が、同点ながら総合成績3位に

↑ 総合成績による表彰式。写真中央が2レース制覇の鈴木優那(#12)、同左が2レースとも2位の岡田駿介(#10)、同右が3位と4位を獲得した梅田祥太朗(#7)
レース1は伊藤諒、レース2は五十住洋佑が優勝
8台により競われたS2クラスも、S1オープンクラスと同じく予選は10分間のタイムアタック方式で、決勝は8周の2レース制。その予選は、ほとんどのライダーが最後の2周でベストラップを更新し、トップ3のギャップは1秒圏内という接戦となった。そして、前戦でランキングトップに浮上した伊藤諒(#19)が、1分07秒330で決勝レース1のポールポジションを獲得した。五十住洋祐(#23)が最終ラップに1分07秒854までラップタイムを削って予選2番手、前戦の欠場によりランク首位から陥落した新井誠(#20)が1分08秒234で予選3番手、寺平悠成(#14)が1分08秒417で予選4番手となり、ここまでが決勝レース1の最前列スタート。予選5番手の納冨桂(#25)は1分10秒台で、トップ4までが5番手以下に大きな差をつける結果となった。
決勝レース1は、伊藤がホールショット。五十住と新井が激しい2番手争いを繰り広げ、新井がダートで一度ストップして後退。その直後、五十住も転倒した。これにより伊藤は、早くも約3秒のリードを確保。新井は納冨に次ぐ3番手、五十住は永倉功真(#27)に次ぐ5番手で1周目をクリアした。しかし2周目、新井は転倒により再びポジションダウン。これで2番手争いは納冨と永倉と五十住の3台となり、伊藤は約7秒先行する独走態勢を築いた。3周目、五十住が2台をパスして2番手争いの先頭に。この集団の約3秒後方には、転倒から復帰した新井が浮上してきた。
4周目、2番手の五十住は後続に対して約3秒のリードを奪い、納冨と永倉の背後には新井が近づいた。翌周、新井は2台をパスして3番手に浮上すると、約4秒先行する五十住を猛追。7周目にはほぼ射程圏内に捉えた。ところがここで新井はまたもや転倒。レースは伊藤が最初から独走して勝利し、五十住が2位となった。転倒から復帰した新井には、最後に納冨と永倉が迫るも、順位は変わらず新井が3位、納冨が4位、永倉が5位となった。なお、予選4番手だった寺平は4周目に転倒してリタイアに終わった。
決勝レース2は、レース1のゴール順でスターティンググリッドへ。ただし、レース1で転倒した寺平は出場しなかった。ホールショットは伊藤。これに五十住と新井が続いた。しかし新井はダートセクションでまたしても転倒して最後尾に。これで納冨が3番手に浮上した。1周目、トップの伊藤は2番手の五十住を約2秒リード。3番手の納冨は五十住から4秒ほど遅れた。2周目、伊藤と五十住のギャップは変わらず、納冨は7秒ほど遅れ、その後方には永倉と上原と新井が続いた。
3~4周目、五十住が伊藤との距離をじわじわと詰め、5周目にはほぼ接近戦。4周目には、4台による3番手争いの先頭に新井が浮上したが、すでにトップ2台からは大きく遅れており、新井はその後に単独走行となっていった。伊藤と五十住のマッチレースは最終ラップまで続き、伊藤が抑え続けていたが、最終ラップの残り数コーナーというところで伊藤が転倒。これにより五十住が優勝、伊藤が2位、新井が3位となった。納冨と永倉と上原の4位争いは最後まで接戦だったが、順位の変動なくチェッカーを受けた。

↑ レース1は、ライバルたちのクラッシュやミスによる後退を尻目に、余裕の単独走行を続けてトップチェッカーを受けた伊藤諒(#19)

↑ レース2の残り半周で、伊藤諒(#19)の転倒により勝利が舞い込んできた五十住洋佑(#23)。翌々週には全日本モトクロス選手権のIBオープンクラスに参戦

↑ キレのある走りを披露した一方で、2レースともに転倒を喫してポジションを落とし、優勝争いに絡めず3位に終わった新井誠(#20)

↑ 写真中央の五十住洋佑(#23)と同左の伊藤諒(#19)は同点ながら、レース2優先ルールにより総合成績では五十住がトップ。 写真右は転倒が響いた3位の新井誠(#20)
▶正式リザルトはこちらにアップいたします。