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INFORMATION 2022 モンスターエナジー FIM モトクロス・オブ・ネイションズ MFJ公式レポート

年に一度、国代表チームが競い合うモトクロスレース「モトクロス・オブ・ネイションズ」が2022年9月26日に開催された。持ち回りの会場は、2018年以来4年ぶりのアメリカ、ミシガン州にあるレッドバッド。コロナ禍もだいぶ落ち着いた感のある世界情勢下において、主要国のほとんどがベストメンバーを集めての参戦となった。

日本代表チームはかねてより参戦が期待されていたものの、コロナなどを理由にかなわなかったAMAトップライダーの下田丈(20歳)をMX2クラス(4スト250cc)に起用。MXGP(4スト450c)には当初予定されていた大城魁之輔が負傷してしまったため、大倉由揮(23歳)が参戦。MXOPEN(無制限)には鳥谷部晃太(24歳)が起用され、全員が若手のチームとして組織された。大倉を除いた関係者・ライダーは1週間以上前に渡米して身体を慣らし、準備も万端。下田のマシンは所属するプロサーキットカワサキが、大倉のマシンはホンダの現地法人が日本で走っているものとほとんど変わらない仕様で用意。鳥谷部のマシンもサスペンションなどを日本から持ち込んで現地でセットアップされた。下田、大倉は各チームのテントから出走、鳥谷部は日本チーム専用に用意したテントから出走するという完全に整った体制が準備された。

 

予選の結果……日本は22位に

金曜日には予選のグリッド順を決めるクジ引きがあり、ここで日本は24番目に決定。土曜日朝には40分の練習走行がおこなわれたが、ベストコンディションのレッドバッドで下田は2:00.215というクラス2位のベストラップをマーク。AMAで初優勝を飾ったレーストラックということもあって、その特性を熟知している下田は周囲の期待通りにタイムを刻んで見せた。大倉、鳥谷部のベストタイムはともにクラス27位という結果に。

予選は各クラス別におこなわれ、各国の最低順位を除いた順位の総和で争われる。つまり全員が1位であればポイント2、10−15−20位であればポイントは25。このトータルポイント1〜19位が予選通過で20〜32位はB決勝へ(B決勝の優勝国は本戦へ参戦できる)。33〜34位は予選不通過となる。予選の通過ラインは毎年異なるのだが例年は30ポイント以下が目安だ。

予選の順番はMXGPクラスからとなるため、まずは大倉がコースイン。強豪ひしめく世界のライダーたちの中でなかなかの出足を見せ、中盤ほどの集団でレースをスタートできた。その後じりじりと順位を下げていくものの、24位に踏みとどまった大倉。予選通過ラインで考えればギリギリの成績といったところ。大倉は「海外の大きなレースが初めてですし、コースも初めて。たとえばティアオフを早めに使い切ってしまったり想定外のことが続きました。またライディングもミスがあって順位を少しずつ下げてしまいました。練習走行の時よりも走れていたとはおもいます。20位以内はだいぶ層が厚い感じがしましたね」とコメント。

予選2本目はMX2、下田の出番だった。AMAでランキングを競い合ったオーストラリア代表ハンター・ローレンスと並ぶ形でグリッドをチョイス。中盤ほどのスタートとなってしまい追い上げの展開に。さらには2周目に前を走るライダーのミスに突っ込む形でクラッシュ。追い上げを図るもののさらに前転してしまうミスがあり、トップ争いの集団からは大きく引き離される形で12位の結果。転倒による身体の負傷は無かったが厳しい戦いとなった。「ゲートピックの順番が遅かったことからはじまり不運が続きました。今回は金網スタートなのでスタートのスキルが生かせず、いいグリッドのライダーが前に出れるような状態でした。世界大会だからといってAMAと違うようなところは他にはなかったのですが……」と下田。

追い込まれた日本、鳥谷部には大倉以上の結果が期待されるところ。はじめて走る世界クラスの大舞台にも関わらず中盤くらいの好スタート。しかし、追い上げには至らず順位を下げて23位の結果となった。「これまで自分が経験した中で最も荒れたコースでした。特に下りのブレーキングギャップがひどくて、ラインをつなげていくのに苦労しました」

結果的に日本は下田・鳥谷部のリザルトをあわせて35ポイント。南アフリカが32ptで決勝圏内19位、同ポイント32ptでベネズエラが20位B決勝へ、アイルランドが33ptで21位。これに次ぐ形で日本は22位になった。

 

できる限りのチームワーク、しかし願い叶わず

B決勝から本戦へ上がれるのはたった1枠。それもわずか20分+2周という短いレースで決定される。また、20〜32位の国が3名ずつ全員で競うヒートとなるのも独特で当然スタートはフルグリッドとなる。予選とは異なりチームで走ることができるところが決勝レースのポイントだ(本戦も2クラス混走の3ヒート制)。日曜日は天気予報通りの雨。夜中から降り続けたレッドバッドだったがレース前にコース整備がしっかり入っていた。それでも練習走行が終わる頃には大荒れのマディコンディションに。

下田はレッドバッドをこれまで3回走っている経験をスタート前に入念に二人に伝えていた。スタートゲートの選び方、ラインの組み立て方などが主な内容だったが、これに応える形で大倉・鳥谷部はスタートを準備。下田はインから3番目をチョイス、大倉はこれを見てイン側の他のライダーから下田を守るためにさらにイン側のゲートをチョイスした。

しかし下田はやはりスタートで苦戦を強いられ中盤ほどでのレース立ち上がりとなってしまう。大倉は対照的に3番手ほどで1コーナーをまわり、鳥谷部は後方からの追い上げ。下田は2周目には大倉に追いついてパス、AMAトップライダーならではの勢いでB決勝を一人だけ速いペースで周回するが、大倉の目の前で他国のライダーに突っ込まれて転倒してしまう。この際に手の甲を骨折、マシンもダメージを受けており、痛みを感じながら攻め続けるもリズムをつかめず再度転倒。大倉8位、下田11位、鳥谷部13位、B決勝の国別順位で5位、モトクロス・オブ・ネイションズとしての国別順位は24位という結果に終わった。

 

各選手コメント

下田丈

「予選でめっちゃいいタイムが出てて、それから繋げられればよかったんですが……。ゲートピックがよくなかったですね、どの位置からスタートしても上がってこられるライダーを取りそろえていれば問題ないのですが、今回はそうではないのだから前のほうでスタートしないと戦えない。いろんなことを積み上げて各ライダーが最大のパフォーマンスを出せるようにすることがとてもレースでは大事なのですが、それがとても難しいことなのです。僕自身はここで初優勝したこともあって自信はあったんですけど、空回りしてしまったかもしれません。来年があるならもちろんリベンジしたいし、3人で集まってスタートから徹底的に走り込みたいですね」

 

大倉由揮

「練習走行の時から身体は動いていてとてもいい感触でしたが、スタートデバイスが外れないトラブルがあって3コーナーくらいまでフロントサスペンションが沈んだままになってしまって、その間にどんどん抜かれてしまったのが心残りです。丈が目の前で転んだのを見て、自分がひとつでも順位を上げないとダメだと再認識して追い上げたのですが、とにかくコンディションが難しかったですね。一度ミスしてしまうと取り戻せないなと。今回の順位は自己ベストだったと思います。決勝には出られなかったのですが、土曜から日曜にかけてだんだん調子も上がっていましたし、走っていて楽しかったです。悔しいという気持ちを感じる以前に、自分にまだやるべきことがあると感じられました」

 

鳥谷部晃太

「自分が今まで体験した中でも、最も荒れたコースでした。対応するとかそういうレベルではなくて世界との差を強く感じましたね。こういった荒れたコースの場数を踏まないと対応できないんじゃないかと思います。全体的に難しいのですが、特に逆バンクの手前とかギャップがひどくてどうやって突っ込んでいけばいいのかわからなかったです。世界のライダーと走ることができて、レベルアップにつながったかどうかはわかりませんが、経験値は上がったと思います」

 

熱田高輝 監督

「すべてが不運だったなと思います。グリッドのクジ引きからはじまっていろいろな不運が重なったかなと。しかしそれは世界各国同じですからしょうがないことなんでしょう。下田選手にはプレッシャーになりすぎて空回りしてしまったのではないかと思います。B決勝は450と250の混走だったのでスタートで下田選手がやはり難しかったのかなと思います。その中でも大倉はいい結果を出してくれて、鳥谷部も含めて2人とも今後に繋がる走りはできたのではないでしょうか。改めて、チーム戦であるネイションズは非常に難しいなと感じさせられました。僕は2018年のネイションズから関わっていて、ここレッドバッドはある意味リベンジだったのですが、やはり予選を一発で通らないと本当に厳しいです」

左から大倉、熱田監督、下田、鳥谷部

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