この日、最後に行われたST600クラスも天気に翻弄されるレースとなった。その勝利をつかんだのは、ただ一人、ドライタイヤを選んだライダーだった。 コースイン直後にまとまった雨が降ってきたST600クラス。グリッドでは慌ただしくレインタイヤに変えるライダーが多かったが、そこで賭けに出たライダーがいた。 ホールショットはポールポジションからスタートした岩戸亮介が奪い、榎戸育寛、ジャンプアップした近藤湧也、横江竜司、稲垣誠、デチャ・クライサー、北見剣、前田恵助、高橋颯と続く。オープニングラップは榎戸が制し、横戸、近藤、横江、デチャ、稲垣と2周目に入って行く。雨はほとんど止み路面は乾いていく一方。その中をレインタイヤを履いてのバトルとなった。今季、全日本にデビューし元気のいい走りを見せている榎戸は、3周までトップを快走するが、4周目に馬の背コーナーでフロントから痛恨のスリップダウン。再スタートするものの24位でゴールするのが精一杯だった。かわってトップに立ったのは横江だった。大崎誠之が出場していないだけに、チャンピオンシップを考えると今回はぜひ勝っておきたいレース。さらに地元SUGOだけに気合いも入るだろう。レインタイヤだけに、ペースは速くないが、ほぼ乾いている路面はタイヤには厳しく、タイヤマネジメントが重要となってくる。 横江をチームメイトのデチャがマークし、タイヤマハの2台がレースをリード。岩戸も3番手につけ健闘していたがペースが上がらず徐々に後退して行く。トップを走る横江が1分40秒台のペースに対し、1分37秒台で追い上げてくるライダーがいた。予選21番手グリッドからスタートした中本郡だった。中本は、ドライタイヤをチョイス。序盤の濡れている路面を耐え、乾いてくるとペースを上げて追い上げて来た。異次元の速さを見せる中本は、10周目のシケインで岩戸をかわして3番手に上がると、11周目にデチャを馬の背コーナーで、12周目の1コーナーで横江をかわしてトップに浮上! そのまま2番手以下を引き離して行く。 これでトップの座は安泰かと思われた中本だが、エンジンから異音がしたため、早めのシフトアップでエンジンをいたわりながらゴールを目指した。そして20周目の10%勾配を駆け上がりチェッカーを受け、悲願の全日本初優勝を達成した。2位に横江が入り暫定ランキングトップに浮上。3位にデチャ、4位に前田、5位に後半追い上げを見せた大久保光、6位に岩戸、7位にピットスタートながらドライタイヤをチョイスして追い上げた蒲谷朋大、8位にST600デビュー戦となった北見剣、9位に序盤のコースアウトから追い上げた稲垣、10位に矢田栄一朗と続いた。