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2011全日本トライアル選手権シリーズ第5戦東北大会
10月最後の日曜日、2011年もこれで最後。土曜日の快晴から、日曜日のお天気は下り坂だったが、曇り空の下、それでも表彰式まで雨も降らず、ちょっと涼しいくらいの絶好のトライアル日和に恵まれた。
12セクション2ラップ、加えてスペシャルセクションがふたつ。シーズン最後の試合がはじまった。
前回中部に比べると、セクション設定はやさしめだった。とはいえ、やはり10人のIASライダー全員があっさりクリーンできるようなセクションばかりではない。第1セクションを全員がトライしてみれば、クリーンで抜けていったのは前回優勝の前年度チャンピオン小川友幸(ホンダ)と黒山健一(ヤマハ)、そして若手の成長株、柴田暁(ホンダ)の3人だけだった。小川毅士(ベータ)は3点、野崎史高(ヤマハ)は1点。野崎は中部大会の時に痛めていた腰を悪化させ、数日前まではこの大会を欠場するつもりでいたという最悪のコンディションでの戦いとなっていた。
試合が動いたのは第4セクションだった。第3で黒山が1点、小川友幸がクリーンして、試合が小川の方に傾いたかに思えたのだが、第4のとんがり岩にマシンをのせられずに小川が5点。ここを黒山は1点で通過して、流れを自分の方に引き寄せてきた。さらに続く第5セクション、ここでも小川は土の急斜面で加速が足りず5点。ここを黒山はクリーンして、たったセクションふたつで黒山のリードは8点となった。
その後、小川は第8セクションの直角の壁登りで5点。これで、黒山のリードはほぼ絶対的なものとなってしまった。しかもこの5点で、黒山に続く2位の座も、野崎に奪われてしまっていた。野崎は腰の痛みと戦いながら、本領発揮にはほど遠いのだが、それでも黒山に11点差の2位、16点で1ラップ目を折り返した。小川は19点。さらに22点で小川毅士が迫っている。この日、黒山のリードは大きかったが、2位以下は大接戦だ。
2位争いにはやや点差が開いていたが、野本佳章(ベータ)も好調だった。黒山が1点、小川毅士も野崎も5点になった第3セクションは、難セクションのひとつだったが、ここを野本はきれいにクリーンしている。5セクションでも、クリーンをしたのは黒山と野本だけ。野本の好調の証だ。
2ラップ目。黒山の優位は揺るがない。1ラップ目に1点で抜けた第5セクションのとんがり岩を落ちて5点になったのが、2ラップ目の黒山の唯一の減点だった。第5セクションは結局全員が5点だったし、ほかのセクションをすべてクリーンされては、ライバルに追い上げのチャンスはない。
勝負の興味は、2位争いに絞られた。黒山が失敗した第5セクションのほかに、小川友幸は第7セクションで5点となっている。むずかしいセクションではあったが、5点を回避するのはそんなにむずかしいとは見えなかっただけに、この5点は意外だった。
小川の2ラップ目の減点はふたつの5点で10点。
小川友幸を上回るスコアで2ラップ目をまとめたのが、小川毅士だった。第4の5点の他、第3で3点、第7で1点をとっただけ。小計9点だ。1ラップ目に3点差だった小川友幸との点差は、いまや2点に縮まっていた。
野崎は、腰痛に耐えてのふんばりも2ラップ目には利かず、5つの5点を取って2ラップ目だけで27点。2位から4位に滑り落ちていた。
2ラップを終え、しばしのインターバルの後のスペシャルセクション。ポジションが入れ替わる可能性があるのは、小川友幸と小川毅士の2位争い。SSの一つ目は、険しい岩のぼりか、それを避けてむずかしい木の根を攻めるかの究極の選択となる設定だった。ここはみな少しでもリスクのないむずかしい木の根を攻める。ここで小川友幸がまさかの失敗。下りでタイヤを滑らせセクションテープを切ってしまって5点となった。結局このセクションを抜けたのは、1点の黒山と、3点の野崎だけだった。野崎はしかし、SSをふたつともクリーンしても、表彰台には届かないだけの減点をとってしまっていた。
SSの二つ目。今シーズン最後のセクション。SS一つ目に比べると、こちらの方が可能性があるという話だったが、やはり5点ばかりが続く。野本も、SSではふたつとも5点だった。
ここを最初に走破したのは小川毅士。1点で抜け、これが小川友幸には大きな目レッシャーとなった。クリーンもできるセクションではあったが、もし失敗して5点になれば、2位は小川毅士のものとなる。
そして小川のトライ。最後の難所を、小川はきれいにクリアした。クリーンだ。これで小川友幸の2位、小川毅士の3位が決まった。
最後にトライしたのは黒山健一。すでに優勝も決まっていて、チャンピオンも確定的な黒山は、落ち着いて確実に最後の難関を登っていった。余裕のクリーン。2011年全勝優勝こそならなかったが、最終戦は2位に23点差、トリプルスコア以上の差をつけての、圧倒的強さを見せつけて、全日本チャンピオンに花を添えた。黒山のチャンピオンはこれで10回目。10回のチャンピオンは、MFJ史上、これが初めての新記録だ。
【黒山健一のコメント】
「前回の中部では気持ちの上で空回りするところがあり負けてしまいましたが、今回は本来の自分らしいペースで試合運びをすることができました。納得の行く良い走りですね。最終戦でいい締めくくりができて嬉しいです。もちろんV10が最終目標ではないので、来年からこの記録をどんどん伸ばしていくつもりです。」
【小川友幸のコメント】
「2位争いとなってしまって、優勝争いはできませんでしたね。今日は実は、リヤさすにトラブルがでてしまい、1ラップ目はだましだましの走りになってしまったのですが、しかしそれ以上の今日のライバルは完璧だったと思います。これでまたタイトルを奪われましたが、まだぼくもゼッケン1番がほしいので、来年またがんばっていきたいと思います」
【小川毅士のコメント】
「1年間悩んでしまいましたが、ようやく自分らしいかなと思える走りができました。それでも、優勝とは点差を開けられてしまったので、まだまだ課題は多いですね。今年は自分のライディングができずに苦しみましたので、来年はシーズン最初から、納得いく走りができるように準備をしたいと思います」
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チャンピオンを全戦の中部大会で決めて、やや余裕のあるゼッケン1番の三谷英明(ホンダ)。いつものように、ひとつずつていねいに、淡々とセクションを回っていく。
しかし1ラップ目のトップは、三谷ではなかった。三谷の1ラップ目の減点9点に対して、滝口輝(スコルパ)が8点でトップに立っていた。3位は岡村将敏(ガスガス)の11点。なかなかの接戦だ。
2ラップ目、三谷は1ラップ目同様に、淡々と減点をまとめていく。2ラップ目は1ラップ目より1点減らして9点。まずまず、勝利の権利のあるスコアだ。
ところが2ラップ目にがぜん調子を上げてきたのが岡村だった。岡村の2ラップ目はたったの4点。これで岡村は、三谷に2点差で国際A級勝者となった。
岡村が国際A級で勝利するのは10年ぶりだという。そして三谷英明は、これが国際A級での自身初めてのチャンピオン獲得となった。
【岡村将敏のコメント】
「10年ぶりに勝てました。SUGOではいままであまりいい結果が出たことがなくて、6番以内に入ったことも珍しい感じだったんですが、今回はオートバイも調子がいいのに乗っているので、がんばりたいなとは思っていました。たまにはこんなふうにいい思いをしないとね」
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三谷英明と同じく、前戦中部大会でチャンピオンを決めている小谷一貴(ベータ)。チャンピオンは決めているが、勝ってタイトル獲得を祝うべく、いつにも増して勝利がほしい1戦だった。
今年、シーズンを通じて国際B級での小谷のライバルは、若い仲間ばかり。今回はさらに若い若い倉持俊樹(ガスガス)も争いに加わってきた。
1ラップ目、トップは小谷で9点。2位は3点差で山口雄治(ベータ)。倉持が13点でこれに続いている。
2ラップ目。小谷は1ラップ目以上に好調ぶりを発揮した。2ラップ目の減点はたった4点。ライバルの追撃を振り切って、今シーズン3勝目。チャンピオン決定に自ら華を添えた。
【小谷一貴のコメント】
「今日は調子もよく、勝つ気で走って勝てたのでよかったです。ミスもなくはなかったのですが、切り替えてがんばりました!す」
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