写真&レポート
↑戻る

6年連続チャンピオン達成
SY250Fを駆る黒山健一

野崎史高、2位
SY250Fを駆る
第3位の小川友幸
シリーズランキングでは2位

国際A級スーパークラス

10月29日、全日本選手権最終戦は、そろそろ秋の装いも深まる宮城県のスポーツランドSUGOで開催された。ここ数年来、SUGOでの最終戦は定番となっている。セクションもパドックの近隣の中杉トライアル場を中心に設営されていて、ギャラリーの観戦も短い距離を歩くだけで全セクションを観戦できる。

第1セクションは珍しく岩のひとつもない泥だけの設定。しかし泥だけだから簡単というわけではないのは、特にIBやIAのリザルトを見れば明らかだ。第2セクションは例年登場する岩の配置された斜面だが、今年はちょっと難度が高い。今回は、ここに限らず全体的に難度の高い設定となっている。

第3セクションは2メートル級コンクリートの真直角の壁を駆け上がる。毎度、なんのきっかけもない垂直の壁なので、毎度ここはライダーを悩ませる。第4は一転、湿った斜面を登っていく自然のままのセクション。滑る山肌と、そこに点在する岩の攻略が勝負の焦点となる。第5は第4のすぐ隣で、やはり滑る斜面がひとつのポイントだ。

中杉トライアル場に入って第6は再び泥の斜面。上へ上へと登らなくてはいけない国際A級スーパークラスのラインは、数日前の雨模様ですっかり水分を吸い込んでいて、ついにひとりの攻略者も出さなかった。しかしライダーの果敢なトライは、観客の拍手を誘っていた。

第7セクションは、トライアル場のもっとも奥の岩盤を素材として岩を配置したもの。小気味よいライディングが求められる。第8は大きな建築ブロックを配置してのビッグステップ。IAクラスもかなりの高さに挑まなければいけないのだが、IASではそれにさらに石を積み上げて高さを増している。第9も建築素材を配置しての高さのある設定。

人工物中心の中杉エリアを抜けて、最終セクションはパドック裏の斜面。岩越えはないが、斜面に潜む岩盤をどう越えていくかが課題となった。ここも、例年難易度が高い。

IASクラスは、いつものメンバーに加え、今シーズン活動の場をイタリア中心とした小川毅士(ホンダ)が帰国、参加者は久々に10名となった。
1ラップ目第1セクション、しかしその小川毅士がいきなり5点。1年間の修行の成果を見せようとした緊張からか、小川はその後も5点を連発して、大量減点。
トップ争いは、第2セクションから動きがあった。小川友幸(ホンダ)が岩を登れずに5点。田中太一(ホンダ)が2点、黒山健一(スコルパ)が1点、クリーンは野崎史高(ヤマハ)ひとりだった。

しかしその直後の第3セクションの壁登り。ここをクリーンしたのは黒山ただひとりだった。他は全員5点。これで黒山が野崎に4点差でトップに立った。その後も、黒山は第6セクションまでを5点知らずで試合を進めていった。序盤の5セクションでの黒山は2点、野崎が8点でこれに続き、田中太一が15点、成田匠(ヤマハ)が16点、小川は17点という状況だ。

第6は全員5点だから勝負なし。1ラップ目後半、黒山がわずかにミスを下のは第8セクションのブロック資材に飛び乗るところだった。小川と野崎がクリーンしたこのセクションでの黒山の5点で、勝負はやや緊張感を取りもどした。最終セクションは野崎だけが3点で抜け、1ラップ目の黒山のリードは4点。2位野崎と3位小川友幸の点差は7点。田中太一は10セクションのうち6個が5点という乱調で、尾西和博、成田とともに36点の同点で6位と沈んでいる。

2ラップ目も、試合はなかなか動きを見せない。第3、第6、第10といった、この日の最難度セクション群は黒山、野崎をはじめ、このラップは誰も抜けることができなかった。黒山と野崎は、2ラップ目をともに20点で終えて最終ラップに突入した。2ラップ目が同点ということは、点差は1ラップ目の4点のまま、ということになる。

小川はこのラップ、こつこつとポジションの復活を狙ったが、ラップ終盤の第9セクションでブロックに乗りそこね5点。2ラップが終わって、黒山とは17点差。3ラップ目にこの大差をどこまで挽回できるかだが、試合前に小川自身が「逆転チャンピオンは絶望的」と語った通りの展開となってしまっている。

試合の焦点は、野崎が黒山にどこまで食い下がるか、あるいはまた逆転がなるかに絞られてきた。野崎は、この2年間、黒山を破ってSUGOの勝者となっている。マシンを換えて苦戦する今年は状況がちがうのか、あるいはSUGOは特別なのか。

ところが3ラップ目は、野崎の痛恨のラップとなった。第2で5点、第8でも5点と、失敗が目立ってしまった。黒山も第7セクションで5点をとっているのだが、これでは逆転はできない。黒山は、この日は一度も登れていなかった最終セクションを最後の最後に3点で抜けて、SUGOでの貴重な勝利を飾った。実は黒山は、はじめて全日本チャンピオンになったのがこのSUGO。そのときはときの世界チャンピオン、丸く・コロメを相手にオールクリーンで勝利を飾ってのタイトル獲得だったのだが、以来、SUGOではとんと勝利に見放されていた。この2年は野崎史高に、それ以前は藤波貴久が、黒山のSUGO制覇の前に立ちはだかった。ヤマハエンジンを駆っての初年度、ヤマハのグループ施設であるスポーツランドSUGOでの最終戦を飾って、黒山にとってはよいシーズンの終幕となった。

黒山に10点差と敗れた野崎は、この大会に期するものがあったから、やはりおおいにくやしがっていたが、4ストロークマシンに乗り換えてからの野崎は表彰台からも遠ざかっていたから、今回は来シーズンへのジャンプボードになる結果となった。
序盤に5点を乱発してしまった小川は、それでも最終的には野崎に6点差に迫っていた。序盤の5点もだが、追い上げ中のクリーンセクションでの5点が痛いと、自身の試合を振り返る小川だった。
どうにも波に乗れなかった田中太一が4位。マインダーのいない成田は、何度かひやりとするシーンを見せながら、堂々たる走りで5位となった。

【1位の黒山のコメント】

「移籍1年目でチャンピオンをとれて、とてもうれしいです。1ラップ目はともかく、2ラップ目に入ってから、去年敗れている野崎選手を意識してしまいました。僕を追い上げているようでしたし、野崎選手にこれ以上まけ続けないというのが、今回の大きなテーマでしたから。今回のセクションは難易度が高く、全日本としていい設定だったと思います。セクションはちょっとミスすると5点になてしまうので、気を遣いました。3ラップ目の第7セクションで5点になった時にはどうしようかなと思いましたけど、野崎選手に追いつかれず、優勝できて良かったです」

【2位の野崎のコメント】

「悔しい結果でした。1ラップ目は調子は良かったのですが、第3セクションのステアケースが上れず、ペースが乱れました。2ラップ目に巻き返して黒山選手に迫ったんですけど、3ラップ目の第2、8セクションで5点になってしまい、黒山選手に及ばすでした。今年はセクションの難度が高く、滑るところが多かったですね。納得はできない走りでしたけど、それでも2位になれたことは来年につなげる結果とも言えます。また黒山選手といい勝負ができるようにしたいと思います」

【3位の小川のコメント】

「今日はいまいちでしたね。走りはそんなに悪くなかったし、バイクもいい感じだったけど、5点が多かった。でも追い上げができて、詰めていったんですけど、その後にイージーな5点をとってしまいました。今日は、挽回するセクションが少なかった。行けるところをきっちり行かないとだめなんですが、行けるところでミスしてしまったから挽回が難しくなって離されました。それがなければいい勝負ができたと思うんですが、残念です。でもおかげさまで、この1年間は例年に増して充実したシーズンを送れました」


優勝した小森文彦
シリーズチャンピオン決定

国際A級

小森文彦(ホンダ)と三谷英明(ホンダ)のチームメイト同士のタイトル争いは、この大会を前に7点差で小森のリード。4位に入れば小森のタイトル決定という状況での最終戦となった。

序盤、三谷がミスを連発するのを見て、気持ちに余裕が出た小森だったが、しかしベテラン三谷はしぶとい。1ラップ後半には、小森にぴったり追いついて、トップに躍り出てしまった。2ラップ目、小森は三谷の動向は気にすることなく、自分のトライに専念する。その成果が出て、減点をやや減らすことができたが、2ラップ目のトータルは三谷と同点、しかもクリーン数も同じ、1点の数で三谷が暫定トップにつけるというきわどい勝負だった。

3ラップ目、今度は小森が奮起する。ラップ減点の21点は三谷と同じ。結果、トータルポイントも69点と小森、三谷が同点に並んだが、3ラップ目に5つのクリーンを叩き出した小森に対し、三谷は3つ。この結果、クリーン数ふたつの差で、小森の最終戦勝利が決まった。タイトル争いは、もちろん小森のものとなった。

3位には、これもチーム三谷の若手、そして小森と同じ長野県出身の斉藤晶夫がはじめての表彰台を獲得した。チーム三谷の、表彰台独占の最終戦となった。

【1位の小森のコメント】

「三谷英明さんとチャンピオン争いをしてたので、緊張して硬かったかもしれません。硬いなりにクリーンはできてましたけれど。そんなによい走りではなかったですけど、手堅くは走れました。三谷さんが、第1、第2セクションで5点になったのを知って、少し気が楽になったんですけど、意識してはいけないなと思い、ライバルのことは気にせず集中できるようにしました。結局三谷さんとは同点、クリーン差で勝つことができました。優勝とチャンピオン両方とれたのですごく嬉しいです」


初優勝した藤原慎也
シリーズランキングは4位

国際B級

クリーンがたったひとりという第1セクションで始まった2006年最終戦。ランキング上位のライダーも、ほぼ全員第1セクションで5点となってしまった。唯一のクリーンはここまで藤原慎也(ホンダ)と同点でランキング4位につける千種有恒(モンテッサ)。藤原も、すでにチャンピオンを決めている平田雅裕(スコルパ)も、その平田にタイトル争いで敗れている志津野佑介(ホンダ)も、みな5点だ。

しかし今回のセクションは難易度が高く、序盤の5点ひとつが試合を決定づけるものではなかった。

中でも1ラップ目からトップに立って、その座を譲らずに3ラップを走りきったのが藤原慎也だ。藤原は2004年国際B級チャンピオンの藤原由樹の実の弟。去年のトライアルGCで圧勝し、その活躍が期待されていたのだが、さすがにB級1年目では期待のほうが大きかったか、ここまで3位2回が最上位で、無得点もあるという成績。しかし最後の最後で、見事な勝利を飾ることができた。

2位は、前回チャンピオン争いの正念場で12位と敗れてくやしがった志津野。3位は、強さも安定感もピカイチ。ほんとうに強くなった平田がはいった。

ランキング上位8名が国際A級に昇格する昇格レースは、前戦までにチャンピオン平田、ランキング2位志津野、3位兼松がすでに昇格を決めている。今回は残る5つの席をめぐって、し烈な争いが展開することになった。

ランキング4位は、今回優勝の藤原がはいった。ランキング5位とひとつポジションを落とした千種は、それでも国際A級昇格のキップを手にした。ランキング6位は、北海道大会で優勝した木本真央(ガスガス)。千種とは4点差だった。木本に6点差でランキング7位となったのは、杉山皓紀。前回中部大会で2位に入るなど、シーズン後半に勢いを高めてきたが、今回は16位と失速して、木本に逆転を許している。

そして最後の昇格キップは、大澤一が得た。開幕戦で勝利した荒木隆俊は今回20位で、今回8位の村上功にランキングで逆転されて10位。大澤の今シーズンの最上位は中国大会の3位。村上には2位が、荒木には優勝経験があるが、コンスタントにポイントを稼いだ方が、最後に笑える役回りを得られるようだ。

【1位の藤原のコメント】

「IBに昇格してからなかなか勝てなくて、やっとお父さんに勝てたこと見せられました。家族、彼女にもいいところを見せられたので、ほんまに良かったです。今日はセクションが難しかったですよね。難しい方が得意なので今日はいけるかなと、けっこう自信ありましたね。よかった、ほんまに」



Copyright 2003 Motorcycle Federation of Japan All Rights Reaserved.
サイトマップ
|
TOPページへ戻る