写真&レポート
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前戦に続き、4stマシンで
優勝した黒山健一

小川友幸、第2位
一時トップに立った田中太一だが、
3位表彰台

国際A級スーパークラス

10月15日、全日本選手権終盤戦の華は中部大会。キョウセイトライバーランドのトレーニングエリアの周囲の山あいを舞台に、いつもの全日本とは趣を異とし、すべてのクラスがまず13セクション2ラップ。その後、国際A級スーパークラスのみが、スペシャルセクション(SS)3セクションをおこなうスケジュールとなっている。トライアル観戦が初めてのギャラリーにも全日本トライアルの醍醐味を味わってもらおうと、午後の観戦が容易な時間にとっておきのセクションを観戦しやすいエリアに並べたもの。去年の好評を受けて、今年はさらに昨年の実績をふまえて、タイムスケジュールなどがシンプルとなってライダー、観客ともに楽しめる設定となった。

セクションは斜面と大小さまざまな岩を組み合わせたもの。雨が降ると過酷なサバイバルトライアルとなるが、幸い当日は好天に恵まれ、10月とは思えない暖かさとともに、ほこりもそれほどなく、よい条件下で大会が開催されることとなった。

国際A級スーパークラスでは、試合序盤から、黒山健一(スコルパ)、小川友幸(ホンダ)、田中太一(ホンダ)の三つ巴の戦いとなった。野崎史高(ヤマハ)、尾西和博(ホンダ)のライディングも悪くなかったのだが、カードを飛ばすなどの失敗があってやや出遅れぎみ。黒山はオールクリーンを続けるが、小川、田中は細かい減点があり、黒山優位で試合が進むことになった。とはいっても、その点差はほんの1点2点で、一瞬にして試合が動く可能性がある。

ターニングポイントとなるセクションはいくつかあった。そのひとつが、複雑な岩肌を登る第3セクション。ここでは小川と田中が、それぞれ1点を失点した。次が見上げる先まで上り詰めていく大ヒルクライム。黒山はDOHCサウンドを響かせて登りきるも、田中は1回の足つき、小川は2回の足つきでマシンを押し上げた。

こうして田中が1点ずつ3回で計3点、小川が1点ひとつと2点ひとつの計3点、黒山がオールクリーンで迎えた第9セクションもまた、キーとなるセクションのひとつだった。3人の中で最初にトライした黒山が失敗。小川と田中はそれぞれ計3点だから、ここをクリーンもしくは1点でアウトすれば、黒山を逆転して一気にトップに立つことができる。

これで気負ってしまったのが小川。小川にすれば、練習などではまず失敗のないレベルだったというが、これがトライアルがメンタルスポーツといわれるゆえん。わずかな心の乱れが、走りに影響を与えてしまう。

対して抜群のマシン運びでこの難所を足つきなしで通過したのが田中太一だった。出口付近で1回の足つきはあったが、黒山と小川が5点となった難所を1点で通過。一気にトップに立った。田中4点、黒山5点、そして小川は8点。この時点で4位の野崎は史高(ヤマハ)は12点を失っている。ただし野崎は、第9セクションは3点で通過している。

この後、急な斜面に設けられた11セクションで、黒山はさらに1点を失った。田中と小川はともにクリーンだったから、田中、黒山、小川は2点ずつの点差を持って並ぶことになった。

この戦況が一気にひっくり返ったのが、次の12セクションだった。田中が、1分のセクション持ち時間をほんのわずかオーバーし、5点の宣告を受けたのだ。田中が1分を使い果たしたのは、セクション出口2メートルを残しての時点だった。これで黒山6点、小川8点、そして田中は9点と、再び黒山が試合のリードをとった。最終13セクションは3人ともがクリーンして、この減点、この順位が1ラップ目の結果となった。4位の野崎は17点、5位につけた坂田は32点。上位3人の争いは、他を寄せ付けることなく、進んでいく。

2ラップ目、しかし小川がまず第3セクションで3点。田中は1点で切り抜け、黒山はクリーン。これで2位の座は、またまた田中が握った。トップ争いが、徐々に2位争いとなっていく。

終盤、黒山が12セクションで5点をとるも、ここまですべてのセクションをクリーンしてきた黒山にとって、この5点はすでに試合の流れを変えるほどの影響を持つものではなかった。むしろ、緊張感を取りもどすのに、ほどよいカンフル剤となった感すらある。

結局、黒山は1ラップ目に5点がひとつと1点がひとつの計6点、2ラップ目に5点がひとつ、全部で11点で13セクション2ラップを終えた。

2位争いは、小川が大ヒルクライムでまたしてもクリーンできずに1点、さらに1ラップ目に5点となった第9でまたも5点と、失点を重ねていく。田中が第3以降はクリーンを続けてきたので、10セクションの時点では田中10点に対し、小川は17点と点差を広げられていた。

ところが終盤、田中に悪夢が襲った。11セクションで本人の不注意から5点となると、12セクションではカードに触れて5点となってしまった。ここへきて、一気に10点の減点は痛かった。

13セクション2ラップを終えたライダーは、そのまま3セクションのスペシャルセクションに入る。午後2時半にオープンとなるこの3つのセクションは、それぞれわかりやすい特徴を備えている。高さ5メートルはあろうかという大岩に飛びつく第1、直径2メートルほどの巨大タンクに飛びつく第2、岩混じりの法面を上り下りする第3。ギャラリーは、いずれのセクションも通路側から観戦することができるから、山歩きの用意のない人でも気軽に迫力あるトライを楽しむことができた。

この難セクションを、トップグループはほとんどクリーンで駆け抜けていく。上位陣では、第1で小川が1点、第2で野崎が1点をとったのみ。セクションは、いずれも大歓声に包まれた。

結果、SSでは順位の変動はなく、黒山や田中などはタイムオーバー覚悟でのトライだったもののタイムオーバーもなく、黒山がトータル11点で今シーズン4勝目。小川は19点、田中は小川にわずか1点差の3位となった。

シリーズポイントでは黒山131点に対し、小川が120点、田中は105点。現時点でチャンピオンの可能性があるのは黒山と小川。残り1戦で11点差。今シーズン1位と2位以外にはなったことがない黒山を相手に、小川は苦しい最終戦を迎えることになる。

【1位の黒山のコメント】

「今日は成績のことは気にせず、ひとつひとつのセクションを集中して走ることを心がけました。幸い、セクションが自分の好きな部類だったこともあって、思ったような試合ができたのはよかったです。今日のセクションは、あっという間に5点になるような設定でしたから、気を抜かずに走る必要がありました。今回はヤマハのお膝元での大会でしたから、ぜひ優勝したかった。そういう思い出大会にのぞんで、無事勝利できたのでうれしいですね。次回最終戦は、チャンピオン獲得よりも、ここ数年、菅生では勝利がないので、今度こそぜひ勝ちたいと思います」

【2位の小川のコメント】

「正直、シリーズタイトルはたいへん難しい状況ですね。でも、黒山選手が4勝したので、自分もなんとかもう一度勝ってシーズンを終わりたい。今回は前半など、走りは悪くなかったと思うんですが、黒山選手にリードされて、ライバルにプレッシャーを与える試合展開に持ち込めなかった。特にクリーンすれば逆転できた第9セクションで5点となって、その後波に乗れないまま試合が進んでしまいました。今日は、最後に田中太一選手に逆転して2位になれたのが、わずかな救いという感じです」

【3位の田中のコメント】

「3番では、いけません。ぼくの場合、3番では次がない立場です。勝ちにきてたんですが、カード接触やタイムオーバーなどで、トップには10点くらいの差がついてしまいました。それが残念です。ただマシンの仕上がりがよくて、第9を1点とクリーンで抜けられたのはよかったんです」


優勝した白神孝之

国際A級

タイトルを目前としていた小森文彦(ホンダ)がちょっと失速して8位となった。ランキングトップは安泰だが、チームメイトである三谷英明(ホンダ)に7点差まで詰め寄られた。残り1戦にして、タイトルの可能性はこの二人のみ。竹屋健二(ホンダ)は13位と、小森以上に低迷して、自らわずかに残されていたタイトルの望みを失ってしまった。

今回の勝利者は、白神孝之。全戦参加がかなった今シーズンだが、無得点もあり、不本意な結果となった試合もあった。なにより、今シーズンは一度も勝利がない。タイトルの望みもついえていたが、そんな中、ようやくの今シーズン初優勝だった。この優勝で、白神はランキング3位に浮上している。

2位には第1戦以来の表彰台となった本多元治(ホンダ)。1ラップ目の4位からジャンプアップしての結果だった。3位は三谷英明。タイトルの可能性も残される三谷だが、HRCのテスト稼業が多忙で、トレーニングがほとんどできない中での参戦。試合中にも難度も休憩をとりながらトライしている状況という。

今回は、全日本に久々に登場した顔ぶれが何人かいる。そのひとりが、今回4位の田中裕人。今シーズン、全日本はまったくお休み状態。惜しくも表彰台を逃したが、2ラップ目の5点がなければ、まだまだ全日本のトップライダーの実力を持つことを証明してくれた。

15位に入ったのは寺澤慎也。4年ぶりの全日本。デモンストレーション中にトライアル以外のイベントマシンとの接触で大けがを負って以来の参戦。まだ試合後半は痛みがでるというが、トライアルセンスは健在なところを披露した。

惜しくもポイントは逃したが、A級スーパークラスでの参戦経験を持つ加賀国光も復活組のひとりだ。ポイントポイントでは、あいかわらずのライディングを見せつけていた。

【1位の白神のコメント】

「前回の中国大会が9位でとても不本意だったので、気合いを入れて練習してきました。でも練習してもうまく乗れなくて、かなりのスランプでした。それで練習はやめて、今度は2週間乗らずに過ごしました。それがいい方向に働いたみたいで、今回は優勝することができました。調子は悪くなかったので、いいところに入っている感触はありました。でも優勝がわかったのは、ゴールしてからです。去年この会場で優勝してから、1年ぶりの優勝ですから、うれしいです」


優勝は平田雅裕。
シリーズチャンピオン決定

国際B級

こちらもタイトル争い終盤戦。前回まで11点差でチャンピオンの座を争っていた平田雅裕(スコルパ)と志津野佑介(ホンダ)だが、今回志津野がまさかの12位と低迷。この結果シリーズランキングでは27点の大差となって、今回優勝した平田が2006年シリーズチャンピオンを決めた。全日本3クラスの中で、タイトルを決めたのは平田が一番乗り。

今回の平田は、しかしけっして好調ではなかった。1ラップ目は6位。その情報を場内放送で聞いた平田は、これではいけないと発奮。2ラップ目の第5セクションの時点で4位に浮上すると、さらにクリーンを連発して勝利してしまった。今シーズン3勝目は、もちろんこのクラス最多勝利である。

2位はこちらも地元中部の杉山皓紀(シェルコ)。1ラップ目はトップだったのだが、惜しくも平田に逆転されてしまった。それでも前戦中国大会の3位に続いて、自己最高位を更新した。杉山も、A級昇格キップを手中にするまでポイントを積み上げている。

3位の藤原慎也(ホンダ)は、1ラップ目の15位から2ラップ目にベストスコアをマークして追い上げた。これでランキングも、一気に4位に浮上。こちらも、A級昇格確定。

現在A級昇格を決めているのは、チャンピオンの平田と、敗れた志津野。そして志津野のチームメイトである兼松誠司(ホンダ)。以下、藤原と千種有綱(モンテッサ)杉山が昇格確実となっている。北海道で勝利した木本真央(ガスガス)もまず昇格はまちがいないが、計算上はまだ油断はできない。残る昇格キップは一枚。チャンスがあるのは大澤一(ホンダ・48点)、荒木隆俊(ベータ・44点)、宮下祥次(ベータ・37点)、村上功(モンテッサ・37点)、水間康輝(モンテッサ・35点)、平田貴裕(スコルパ・29点)、栗田翼(ホンダ・29点)まで。さて、し烈な昇格争いも、最終戦菅生大会で決着がつく。

【1位の平田のコメント】

「今日は調子がいまひとつだったんですが、2ラップ目の第1、第2をクリーンしてから調子が出ました。優勝できたのは、2位、3位が崩れてくれたのも大きかったと思います。ここは地元ですから、そういう意味でもうれしかったし、今日はサポートをしてくれる父の誕生日でもあったので、いい誕生日プレゼントができました。チャンピオンを決めようと思ってはいなくて、楽しく走れればと思っていました。楽しく走れて、その結果チャンピオンになれたので、今日はいい日です」



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