写真&レポート
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4ストロークマシンを
念願の優勝に導いた黒山健一
調子を戻した田中太一
第2位獲得
3連勝はストップ
小川友幸は第3位
国際A級スーパークラス

9月10日、本州の西の果、山口県下関市幸楽トライアルパークには、素晴らしい舞台が広がっていた。岩あり斜面あり沢あり。しかも敷地は広大で、あらゆるトライアルライダーがライディングの楽しさを満喫できる。全日本選手権の会場選びも、近年はどの地方でも苦労が耐えないが、中国地方のライダーはこんな素晴らしいフィールドに恵まれて、なんと幸せなことだろう。

今回の参加者は国際A級・B級とりまぜて112名。セクションは全部で11セクションで、そのうち第6セクションは国際A級専用で、第8セクションは国際B級専用。各クラス、それぞれ10セクション3ラップで戦った。

全日本シリーズ3連勝を続けている小川友幸(ホンダ)は、見えてきた自身初のシリーズチャンピオンに向けて、今回の大会には並々ならぬ意欲を持ってのぞんでいた。序盤戦でつまづきがあった小川は、勝利数こそ黒山健一(スコルパ)に勝っているが、シリーズポイントでは北海道大会を終えた時点で3ポイント差をつけられている。今回4連勝目を上げて、この点差を快勝しておくのが、タイトル獲得への大きな一歩となる。

一方黒山は、ヤマハエンジンを搭載した4ストロークのマシンに乗ってから、いまだ勝ち星がない。黒山にとって初めての4ストロークマシンでのライディング、そして開発室から出てきたばかりのニューマシンを実戦投入することのむずかしさなど、黒山の(そしてスコルパ・ヤマハ陣営の)チャレンジはひとかたならぬものがあるが、全日本チャンピオンの座をほしいままにしている黒山にとって、ここまで続けて勝ち星がないのはなじまない。そろそろ、勝利を思い出したいところ。

もちろん、黒山と同じくシーズン途中からニューマシンに乗っている野崎史高(ヤマハ)も、今シーズンから4ストロークに乗り換えた田中太一(ホンダ)も、マシン慣れうんぬんについてはそろそろ言い訳にしたくない時期にきている。トップライダーの実力発揮の勝負が、はじまった。

こんな中、誰よりも緊張を持って大会にのぞんでしまったのが小川だった。3連勝はこれまで経験がない。勝ち続けることで勝ち方を学んだ小川だったが、一方で、勝ち続けるむずかしさもまた、いやというほど学ばされることになった。緊張で、眠れない。そしてそのまま大会を迎えた。

からだのかたいまま試合を始めた小川は、序盤からミスがあった。細かいミスは、しかしやがて5点の大きなミスにつながって、試合中盤には勝利はおろか、表彰台も危ういという状況を作ってしまっていた。

一方黒山は、肩の脱臼癖という爆弾を抱えながら(シーズンオフに手術することが決まっている)ていねいにセクションを攻めていく。一頃はライバルとの闘い、セクションとの闘い以前に、かみ合わないマシンと自分自身の闘いに終始していた印象もあったが、今回あたりは、不安要素がずいぶんと減って、かつての横綱相撲に戻ってきた。1ラップが終わったところでほぼ10点のリードをとって、黒山の優勝パターンはほぼ完成してしまった。

2位の争いはし烈だった。1ラップ目は野崎、2ラップ目は田中太一と、順位がころころと入れ替わる。調子を取り戻した黒山には遅れをとったが、2位争いはなんとしても勝ち取りたい猛者ばかりだから、僅差の闘いとなるのも無理はない。

今回の最大の難所は第6セクションだった。斜面にそって斜めに置かれた大岩を登っていく設定だが、助走がない。1ラップ目にクリーンしたのは黒山のみで、他はほぼ全滅。ところが2ラップ目には、黒山も落ちてしまう中、今度は田中太一だけが絶妙なグリップ感覚でこれを登りきった。ここから、太一の快進撃が始まった。

3ラップ目も、太一はここをクリーンして、いよいよ本調子。黒山の1ラップ目と並ぶ、4点のベストスコアをマークして、2位の座を確定的とした。一方野崎は追い上げを狙った第4セクションで足を出さずに我慢をし岩から転落。指を激しく痛めてしまった。以後痛みと戦いながら試合を進め、4位に甘んじた。小川はこの両者にはさまれて、3位という結果に落ちついた。

タイトル争いは、いまだ黒山と小川の間で激しいが、両者の間には8点の差が生まれた。残る2試合、小川が優勝を続けても、黒山が2位を続ければ、それで黒山のチャンピオンが決定する計算だ。

残る試合、黒山がチャンピオンの輝きを取りもどしたまま突っ走るか、あるいはさらに波乱が待っているのか、さて。

【1位の黒山のコメント】
「北海道の後、マシンのセッティングを見直して、とても調子良くなってました、今日は調子よく走ることができました。今日は久しぶりに、試合した感じです。久々に勝負しようって感じで、緊張しましたね。結果、第1セクションから、うまい具合に走れたてよかったです。とりあえず残り2戦、肩を脱臼しないように走ります。次回の中部大会はヤマハの地元でもあるので、是非勝ちたい。最終戦も、長いこと優勝できてない大会なので、是非勝ちたいです。それにしても今回は、4ストマシンを初優勝させることができたのが、なによりうれしいですね。せっかくいいマシンをもらったので、結果を出さないとだめじゃないですからね」

【2位の田中のコメント】
「今回からマインダーが変わって、不安要素がかなりありました。セクションもハードでしたし。その影響が1ラップ目に出てしまいましたが、2ラップ目3ラップ目は調子を上げられて、この2ラップでは黒山さんを上回ることができたのが収穫です。優勝はできませんでしたけど、開幕戦で2位になって以来の2位ですから、ようやくここに帰ってこれたというところです。第6セクションのクリーンも、マシンがよくなって、それに練習の成果がぴったりあった結果です。試合運びも、タイムオーバーもなく、そういうてんではパーフェクトでした」

【3位の小川のコメント】
「3位ですね。ダメです。3連勝して試合にのぞむというのは初めてで、意識していなくてもへんなプレッシャーに悩まされました。それが、そのまま悪い流れになってしまった。しかも、追い上げようとクリーンをねらって、さらに減点を増やしてしまうという展開もありました。やはり勝つためには、追い上げるのではなく、早くリードをとって優位な展開を作らなければいけないとつくづく学んでしまいました。苦しい戦いでした。残りは、もう勝っていくしかないですから、がんばるしかないです」


優勝した小森文彦

国際A級

小森文彦(ホンダ)、三谷英明(ホンダ)、竹屋健二(ホンダ)のチャンピオン争いが焦点の国際A級。しかしそんな中、今回は小森が抜群の試合運びを見せた。

小森は、第1セクションから1点をついてしまったが、しかしそのあとはクリーンの山を築いて、1ラップが終わってみれば、結局このラップの減点は第1セクションのみ。たった1点でラップを終えた。三谷は12点、竹屋は13点と、ライバルは乱調模様だ。結果を見れば、この時点ですでに小森の勝利は確定的だったということになる。

1ラップ目の2位は新潟の若手宮崎航(ベータ)だった。しかし宮崎も、小森を脅かすにはちょっと減点をとりすぎた。1ラップが終わった時点で、小森を倒すには残るセクションをオールクリーンしなければいけないというのは、ライバルにとってはつらい戦いだ。

小森は、2ラップ3ラップと減点を増やすものの、5点はひとつもなく、他の追随を許さず試合をまとめてしまった。3ラップともに減点したのは、第1セクションのみだった。

2位の座は、最後の最後まで争われたが、同点クリーン数同じ、1点の数の勝負で岡村将敏(スコルパ)をかわした竹屋が勝ち取った。2ラップ目まで2位につけた宮崎は、この両者に4点差で4位。三谷は宮崎にさらに1点差で5位。小森と三谷のシリーズポイント差は14点まで広がって、小森の優位はいよいよ強くなってきた。

【1位の小森のコメント】
「北海道は苦手な会場でダメでしたが、今回は勝つ気で、気合いが入っていました。乗れてもいたんで、第1セクションで1回足ついただけで、出だしもよくて、よかったです。走りやすかったです。三谷さんが調子よくないのもわかったんで、それもあって気分的に楽に走れました。三谷さんが調子いい日は、プレッシャーかかりますから、また結果がちがっていたかもしれません。竹屋さんが2番はちょっとまずいかな。でもあと2戦この調子で行ければいいと思ってます」


初優勝、志津野佑介

国際B級

今前回北海道で初優勝した木本真央につづき、今回もこのクラス初優勝者が現れた。岐阜の志津野佑介(ホンダ)だ。

といっても、その勝利は楽ではなかった。同じ岐阜の兼松誠司(ホンダ)と終始接近戦を演じ、2ラップ目が終わったところで同減点、3ラップ30セクションを終わっても同減点。クリーンひとつの差で勝負がついた。

兼松は、最終ラップの最終セクションで減点2を喫している。これをクリーンするか、クリーンしなくても減点1でまとめていれば、結果はちがったということだ。まさに、土壇場の逆転劇だった。

志津野は九州大会を欠席したが、この勝利でランキングトップの平田雅裕(スコルパ)に11点差までつめよった。兼松も志津野に遅れること10点差でランキング3位につけている。平田は今回4位。浮き沈みのある国際B級クラスでは、チャンピオン争いも、上位8名までの国際A級昇格争いも、最終戦の最後の最後までもつれ込むことになりそうだ。

【1位の志津野のコメント】
「今日のセクションは、下見では一見難しく見えたんですけど、走ってみれば、いけちゃうみたいな感じでした。今日は早回りしてたんで、ライバルのことは気にならなかったですよ。今年は九州は出ませんでしたが、残りは3戦全部でます。ぼく、トライアルは長いんで、初優勝はうれしいです」



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