近畿大会から2ヶ月と1週間。長いインターバルのあと、全日本選手権は北海道大会を迎えた。会場は、ここも毎年おなじみとなった上川郡和寒町わっさむサーキット。モトクロスの全日本選手権でもおなじみのモータースポーツエリアだ。金曜日までは雨模様だったという天候は、土曜日からぐんぐんと好転し、日曜日は朝からからりとよく晴れた。日中は真夏の太陽が暑いくらいに照りつけて、ライダーから体力と集中力を奪う過酷な一日となった。 小川友幸(ホンダ)は、最大のライバル黒山健一(スコルパ)が4ストロークのニューマシン導入にてこずっている間に、全日本2連勝を達成した。もともと美しいライディングには定評のある小川だが、美しさにこだわって、ときに勝つためのライディングができない点を指摘されることの多かった小川でもあった。2連勝したことで、少しずつ、そのライディングや考え方にも変化が出てきているのも事実だ。一方黒山は、そろそろニューマシンを自分のものにして自分の定位置である表彰台の真ん中に返り咲きたいし、いつまでも小川を調子づかせておくわけにはいかない。 しかし黒山のそんなもくろみも、試合開始直後の第1セクションで軌道修正を余儀なくされた。セクション出口に設けられたひときわとんがった岩越えで黒山は転落。落ちたときに肩を傷めてしまって、その後のライディングにも影響を与えるようになってしまった。試合展開的には、第1セクションにして、ただひとりここをクリーンした小川が、大きなリードを持ってスタートを切ることになった。他は、坂田匠太が2点で抜けた以外は、全員が5点となった第1セクションだった。 百戦錬磨経験豊富な黒山を相手に、小川はリードを油断に変えることなく、慎重にトライを進めていく。黒山が足を出したりして減点を増やしていく中、小川は第5セクションまで、すべてのセクションをクリーンした。第6セクションでこの日最初の減点を喫した小川だが、それはB級もいっしょに走るような泥の登り斜面でのことで、ほんの1回足をついただけだった。小川は、難セクションは、ことごとくクリーンしていたのである。 小川と黒山のライバルは、ごく少ない。今回、渋谷勲と井内将太郎が欠場しているので、国際A級スーパークラスの参加者は8人だった。本来小川と黒山の闘いに割って入るはずの野崎史高(ヤマハ)と田中太一(ホンダ)は、ともに今年から4ストロークにマシンが川って、まだまだ4ストロークライディングの修業中の身だ。黒山とて4ストロークマシンはまだ3戦目だから、以前修業中なのだが、そこは全日本チャンピオンにして、日本人で最初にトライアル世界選手権で優勝した男。6月の世界選手権日本大会では、小川よりも上位につけて、自らのライディングの進化を披露していた。 しかし、世界選手権と全日本選手権では、いろいろな意味で勝手がちがうらしい。小川と黒山の間にできた1ラップ目の点差7点は、2ラップ目には13点となり、最終的には14点差。小川友幸の、ぶっちぎりの3連勝となった。もちろん小川にとって初めての3連勝だ。 ライダーは、勝つことで勝ち方を覚え、そしてまた強くなっていく。すでに立派なベテランの小川だが、今の小川は、こうしていよいよ強くなっている過程にある。 【優勝した小川のコメント】 「やりました。今回はいろんな意味で満足の大会でした。マシンもとってもいい仕上がりになってきたし、自分のコンディションもいい。よいペースを保って、試合をリードできました。走り方や考え方なども、変わってきたという実感もあります。このよい流れを維持して、後半戦に勝負をかけていきたいと思います。まだチャンピオンシップでは3点を追いかける身ですから、気を引き締めて、がんばります」 【2位の黒山のコメント】 「第1セクションで5点になって、その際に肩を傷めてしまって、それで今日は終わりました。そろそろ勝たないと、マシンに慣れなくてといういいわけもしていられないと思ったのですが、肩をかばって、乗りかたもおかしくなっていましたね。小川さんを調子づかせたくないので、次は勝たないといけません」 【3位の野崎のコメント】 「4ストロークに乗って3戦目。ようやくこのポジションまで復帰しました。とはいっても、今日は2位になれる大会だったので、ちょっと残念なところもあります。1ラップ目の後半から2ラップ目の序盤にかけて、乱れてしまったのが反省点です。でも今回は、3位になれたことで、こんごにつなげたいと思います。マシンも完璧といっていいくらいに仕上がってきているので、3位の座に甘んじているわけには生きません」 |
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