2006シーズン第2戦は、昨年同様の九州大会。会場も同じく熊本県矢谷キャンプ場。しかし今年の全日本は、ライダーとマシンの組み合わせが大きくちがっている。九州のファンには、新鮮な全日本を楽しんでもらえたのではないだろうか。朝のうちは雨模様であいにくの天候だったが、昼過ぎには急速に晴れ間が広がって、気持ちがよい春日和となっていた。
マシンをスコルパにスイッチしながら、開幕戦でオールクリーンで優勝した黒山健一(スコルパ)。2006年の顔ぶれの中で、ぶっちぎりの好成績はフロックなのか、それとも黒山の実力か。九州大会は、その証明の1ページともなる。もちろん、ライバルは黒山の独走をくいとめなければいけない。特に、世界選手権参戦から全日本に活躍の場をシフトした野崎史高(ヤマハ)にとっては、ストップ黒山は自身に与えられた至上命令でもある。
ところが野崎は、シーズンオフの負傷で、開幕戦は痛みをおしてのトライだった。トライアルはメンタルが重要なスポーツだから、足の痛みは集中力をさまだけていた。今回、野崎の足は、まだまだ本調子とはいえないまでも、マシンに乗っている限りは、ほとんど負傷を忘れていられるくらいには復活していた。あとは、ケガのない自分の感覚を、どこまで取りもどしていけるかが鍵だ。
いつものとおり、主だったライダーがみなクリーンを続け、ライバルの脱落を待つ序盤戦。最初にミスをしたのは、小川友幸(ホンダ)だった。第3セクションで岩の上からヒルクライムへの加速に失敗し、まったくのぼれず。ライバルはほとんどクリーンだから、ここは手痛い5点となった。
黒山2点、小川3点以外はすべてのライダーが5点となった高い高いヒルクライムを抜けると、細かいマーカー規制から大岩に飛びつく第6セクション、巨大な岩をダイナミックに越えていく第7、第8と続くが、ここでそれぞれのライダーが、それぞれに失敗。第6での細かいミスは、黒山以外がほぼ全員同じような失点を見せたが、第8では野崎がカードを飛ばせば、田中太一(ホンダ)は派手な前転をしてしまった。ミスのないのは、黒山だけだ。
その後小川は、最終セクションでもタイムオーバーの5点となった。岩のすり抜けに時間をとられた結果のタイムオーバーで、試合の流れが、うまく小川のほうを向いていない印象。小川は、プライベートとしてトライアルを楽しむ渋谷勲(シェルコ)に次ぐ5位で1ラップを終えた。もちろんトップは黒山で2点、2位には田中太一が14点で続いていた。すでに黒山との差は開きすぎている。
2ラップ目、ようやく野崎のリハビリが完了したようで、いきなり減点を減らしてきた。細かい減点を積み重ねての減点5。対して田中はふたつの5点を含んで減点12。小川はこのラップは5点なしで8点とやや上位との差をつめてきたが、2ラップ目に大量減点を喫した渋谷の上位につけるのが精いっぱいだ。
3ラップ目、野崎はさらに調子を上げてきて、ついにオールクリーンまで後一歩の減点1でこのラップを終了した。もちろん、ここまで完璧に近い走りを競れたら、ライバルもあきらめざるをえない。2位野崎のポジションが確定した。田中は、3ラップ目にも時間制限ぎりぎりであせっての5点など、野崎に対しての再逆転ができずにいる。
野崎と田中の点差は11点、田中と小川とは4点差だったが、田中と小川は思わぬ失点が重なったから、本調子同士で戦えれば、2位争いは今よりももっとレベルが高いところでし烈なものとなるはず。
黒山は、オールクリーンこそ今回は無理な感じだったが、トータル減点がたったの5点。これまた、ライバルには手も足も出ないぶっちぎりだ。
黒山、野崎、成田のスコルパ・ヤマハチームの面々は、フランスからのマシン到着が予定通りなら、次回5月7日の関東新潟大会より、4ストロークのSY250Fに乗る可能性が大だという。彼らは、ここでまた2ストロークから4ストロークへのマシン変更の試練を受けることになる。スコルパ勢が好調な原罪に遇っては、その試練が楽しみでもある。
まだまだ、新しいチャレンジがそこここにあふれている全日本選手権なのであった。
【黒山健一のコメント】
「真壁はああいった形で優勝しましたが、だから乗り込みが完成ではなく、九州はまたはじめての感覚で挑まなければいけないとは思っていました。1ラップ目中盤までは、みんなオールクリーンを続けていましたから、ここで減点をしたら試合が終わると思って、気が張っていました。油断をすると、一瞬で5点になるセクション構成ばかりでしたし。3ラップ目はオールクリーンをねらったのですが、失敗してしまいました。2ラップ目は、小刻みにふっていけばいいものを、自分の腕を過信しすぎて大きく振って足が出ました。まだまだ新たな挑戦中です」
【野崎史高のコメント】
「太一くんと小川さんの点数は気にはなっていましたが、自分が崩れなければいけるはずという思いはありましたから、途中からひとの減点は気にしなくなりました。勝てなかったというてんでは多少心残りはありますが、ケガからの病み上がりだと思えば、2位で走り終えることができただけでもよしとしなければいけないと思います」
【田中太一のコメント】
「序盤はいい走りができていましたが、第8セクションで前転したところからリズムが狂いました。マシンが変わりましたが、その影響はほとんどないと思っています。でも実は、新しいマシンに慣れるのに一生懸命の部分があって、余裕がないのも事実のようです。だから、ちょっとうまくいかないことがあると、一気に悪い結果になってしまうのかもしれません。現状では100%の力を注いでいると思いますが、でも、まだまだです」
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