写真&レポート
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黒山健一にまったく死角なし
全日本で3度目のオールクリーン
マシンをスイッチした田中太一
見事2位を獲得
田中太一に逆転を許した
小川友幸

国際A級スーパークラス

2006年の新しいシーズンが始まった。2200人の観客を集め、茨城県桜川市真壁トライアルランドで開催された全日本選手権第1戦。今年は特に国際A級スーパークラスで例年になくマシンの乗り換えが目立っていた。

設営されたのは11セクション(国際B級は第6セクションをのぞいた10セクション)。セクションの配置は観客が移動しやすいように工夫されていて、ダイナミックなセクションをたっぷり堪能できる試合設定となっていた。

台風の目は、全日本への専念を宣言した黒山健一(スコルパ)を擁するスコルパ・ヤマハチーム。当初、世界選手権参戦が計画されていた渋谷勲(シェルコ)がチームを離れたが、黒山、成田匠(ヤマハ)、黒山同様全日本に専念することとなった野崎史高(ヤマハ)の3名による最強チームを構成する。当初彼らは、4ストローク250ccエンジンを搭載したSY250Fで出場することになっていた。しかし今回は間に合わず。

マシンや体制が変わったライダーは彼らのライバルチームにもいる。2005年ランキング2位、田中太一(ホンダ)は、参戦体制をゼロから見直した結果、ぱあわくらふとチームからホンダRTLで参戦することとなった。同じくぱわあくらふと入りした尾西和博(ホンダ)とともに、4ストロークマシンでの新たなトライアルの組み立てが使命となる。

去年と同じマシン、同じ体制をとって参戦するのは小川友幸(ホンダ)。乗り慣れたマシン、息の合ったチームは今シーズンの全日本にあってはアドバンテージをとったともいえるが、かつてマシンのスイッチという変化をバネにした自身の経験をかんがみ、油断はできないと気を引き締める。

シェルコを選んだ渋谷は、プライベートの参戦体制をとった。しかもマシンの入手が遅れて、慣熟期間もごくわずか。しかしライダーの資質からしたら、トップを争う選手のひとりであるのはまちがいない。

第1セクションでは、成田がアップヒルを登りきれずに5点、田中太一がちょっとした足つきで1点をとった以外、黒山、小川、野崎、渋谷、井内将太郎(ガスガス)と、クリーン合戦。神経戦が予感される試合がスタートした。

ところが次の第2セクション、複雑なステップを登る入り口の岩盤で、ライダーが次次にはじき返されていく。太一がはじめて3点でここを抜けるまでは、全員が5点。そこを黒山は見事なマシンさばきでクリーン。序盤にして、ライバルに大きく水をあけることになった。

この日、黒山はひとり孤高の世界にいた。去年のシーズンから、ひとり別世界でトライを続けるような印象のある黒山だが、マシンの変化に対応しようと腐心することで、さらにその集中力は高まっているようだ。

黒山に続く2番手は小川友幸。第2セクションではそそり立つ岩盤に跳ね返されて5点となったが、それ以外ではよく点数を押さえて1ラップ7点、2ラップ目6点と、2位の座を確実にすべく試合を進める小川。ぱわあくらふとスペシャルに乗る太一は、小川にもやや水をあけられたまま1ラップを消化した。野崎、渋谷はその太一よりもさらに5点ほど多い減点。優勝の行方は黒山ひとりに絞られた印象だ。

1ラップ目に4位につけたのは、ぱわあくらふとから離れて、マシンをガスガスにスイッチした井内将太郎(ガスガス)だったが、試合が進むにつれて、野崎と渋谷に遅れをとっていく。結果、体制の変化があっても、上位陣の顔ぶれは去年と同じものになっていった。

2ラップ目、3ラップ目、トップ争いをする面々にとっては、すべてのセクションをクリーンするのが目標となった。たとえ失敗があったとしても、減点はなるべく最小限度とすること。この目標をきちんと守れたのは、結局黒山ひとり。2ラップ目まで2位につけていた小川は、3ラップ目にふたつの5点を喫して、太一の逆転を許してしまった。

3ラップ目最終セクション。最後のライダーとなったのは黒山健一だった。すでに勝利を確実なものとして、しかし慎重にラインを確認する黒山。黒山にとっては、自身3度目となる全日本オールクリーン達成のための最終トライだった。最終セクションは、はるか上まで駆け上がる大ヒルクライム。途中、土砂が崩れてできた段差で勢いがそがれるむずかしい直登ルート。黒山のマシンコントロールはここでも完璧。見事、オールクリーンを達成して、スコルパ・ヤマハに移籍後初の大会を締めくくったのだった。

2位争いは、3ラップ目を2点でまとめた太一。野崎は3ラップ目を1点でまとめたのだが届かず、小川が3位表彰台を手中にした。

マシンや体制が変わろうとも、黒山の強さは変わらずの開幕戦。しかし新しいシーズンは始まったばかり。2006年は、まだ波乱や新たな展開が待ち受けていそうな予感である。

【黒山のコメント】
「オールクリーンは狙ってできるものじゃないと、ぼくはいつも言っていますが、3ラップ目に入って、今回は狙ってみました。狙ったとたんに、あぶないシーンもありましたけど。スコルパにマシンを変えての初優勝が今回の目的でしたが、結果的に、オールクリーンもできて、とてもいい試合になりました。始まるまでは、自分がどの程度の実力を持っているか、不安でとても緊張していたのですが、試合が進むに連れて、その緊張も解けてきたという感じです。今年は、チームを移籍しての初チャンピオンに挑みます。といっても、今シーズンの全日本はすべて初づくしですから、まだまだ緊張の連続ですけれど」

 


開幕戦優勝の小森文彦

国際A級

スーパークラス経験者と国際B級からの昇格グループの戦い。国際A級は、戦いの図式が興味深い。今回は、ベテランである経験者が若手を押さえて上位を占めることになった。

優勝はスーパークラスを経験したのち、1年のブランクから昨年復活した小森文彦(ホンダ)。チャンピオン経験者の田中裕人をメカニック役につけ、よいチームで戦えたことも勝因のひとつ。渋滞で時間がなくなる中、田中のアドバイスで6セクションをエスケープしたのが幸いした。これで5点を失うことになったが、ここは多くのライダーがよくて3点の難所。小森はここをエスケープすることで、時間の余裕も手に入れたし、いくらかの休息も手に入れた。これが、後半の突き放しに功を奏したわけだ。

今回、スーパークラス未経験者の筆頭は西元良太。2005年最終戦に続く4位入賞だ。自転車トライアルでジェロニ・ファハルドを破って世界チャンピオンとなった実力者が、いよいよ本領を発揮しはじめた印象だ。

【優勝した小森のコメント】
「去年は2位でしたけど、今年は優勝。去年以上にいいスタートが切れたので、うれしい思いです。ただ去年は、中盤から終盤、ランキングポイントでも上位と離されてしまったので、今年はチャンピオンになるにしてもなれないにしても、とにかく毎回上位と争う戦いをしたいと思います」

 


初優勝、ベテランの荒木隆俊

国際B級

若い新たな才能とベテランの拮抗。国際B級シーズンの序盤戦は、この図式が興味深い。今回は、ベテランの荒木が、ホームグラウンドの地の利を生かして勝利をおさめた。今シーズンはA級昇格をかけて、全日本選手権に全勢力を傾ける決意をした荒木だったが、その成果が開幕戦にして現れたかっこうだ。

今回は、ライバルが比較的同じ時間帯で回っていたから、周囲の点数もだいたい知ることができた。それで、中盤以降は状況を見定めながらトライすることができたようだ。

荒木に続いて上位を占めたのは、兼松誠司(ホンダ)、木本真央(ガスガス)、志津野 佑介(ホンダ)、栗田翼(ホンダ)、平田雅裕(スコルパ)と、いずれも若手ライダーたち。シーズン中盤に向かって、若手ライダーの巻き返しも楽しみなところ。

【優勝した荒木のコメント】
「セクションを見て、ミスしなければなんとかなるとは思っていました。逆に5点をとったらつらいなとも思いました。ライバルとは近いところでいっしょに回れたので、情報はつかみやすかったのですが、藤原慎也(ホンダ)の状況だけはわからなかったので、それが驚異でした。いくつか失敗もありましたが、5点にならず3点ででられたので、それがよかったかと思います。去年近畿大会で3位になりましたが、優勝ははじめて。今年はがんばらないといけませんね」

 



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