写真&レポート
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優勝した野崎史高
2位になった黒山健一
国際A級スーパークラス
10月30日(日)。いよいよ2005シーズンも最終戦。全日本選手権第8戦東北大会は、おなじみ宮城県スポーツランドSUGOでの開催だ。中杉広場トライアル場に10セクションのうち5セクションが配置され、ギャラリーの移動距離が比較的少ないのもこの会場の特徴のひとつ。

今シーズン、ここまで全勝を続けている黒山健一(ベータ)。2位に比較的僅差につめよられたのは第1戦と第7戦のみ。そのどちらも、黒山を追いつめたのは野崎史高だった。野崎にすれば、開幕戦でも前回中部でも勝てずにいる。そのうっぷんを晴らしたいところだ。

第1セクション、いきなりドラマが動いた。野崎、成田がクリーンしたあとにトライした黒山が、ゲートマーカーに接触、5点となってしまったのだった。
ここでは田中太一(ガスガス)も5点、渋谷もミスをして2点減点。競技の出だしで、明暗が分かれるところとなった。第1セクションはこの3人以外は全員クリーン(尾西和博は足の負傷で全セクションをエスケープして試合を進めた)しているから、第1セクションで減点した3人のハイディは大きかった。

続く第2セクション、黒山と渋谷は、まだ走りに本来の切れが戻らない。ふたりとも岩の頂点で1点減点を加算して、追い上げるどころか、自らを苦境に追い込んだ。ここでは小川友幸(ホンダ)も1点。早くも減点0は野崎、成田匠(ヤマハ)、小川毅士(ホンダ)の3人だけとなった。湿った天候を想定されたセクション設定で、1点を争う展開となるのは下見の時点で明らかだったが、始まってみれば、意外に減点をとる選手が多い。

黒山、渋谷、太一らは第4セクションでもさらに1点の減点を追加した。第4セクションでは成田、毅士も減点1をマークし、オールクリーンを続けているのは野崎ひとりとなった。野崎はバランスを崩すシーンもあるが、それをうまくカバーしてクリーンでセクションをアウトし続けている。この後も野崎はクリーンを続け、ついに第9セクションまで減点0を続けていった。

これを追うのは減点2の小川友幸。今シーズンは苦しい戦いを続けてきた小川だが、ようやく点数をまとめられるところまで状況を復活させてきた。序盤好調だった成田、毅士は徐々に細かい減点を重ねている。黒山は第4での減点以降は、本来の走りを取りもどしたようで、大きなハンディを追いながら野崎を追撃している。渋谷も同様に第4以降は減点0を続けたが、なんと第9で谷側に倒れかけ、そのまま斜面を転げ落ちてしまった。

野崎の優位ばかりが浮き立つ1ラップ最終セクション。真っ先にトライした野崎は、急斜面でのターンからの下りで、やむなく1回足つきをした。それでもたった1点で1ラップを終えたのだが、野崎はこの戦況を把握していなかった。自分がこの減点だから、ライバルもこの程度で回っているはずだと、周囲を気にせず、集中を高めることに専念した。ところが実際は、本来の走りができていたのは、野崎ひとりだったのだ。

小川友幸は、最終セクションで1分のセクション制限時間をオーバーして、痛恨の5点減点。野崎追撃の可能性のある唯一の追っ手だったが、この5点で2位争いの集団の一員となった。2位争いは、黒山、小川の7点を筆頭に、太一が8点、渋谷が9点、毅士が10点、そして成田が11点。4点の間に6人という、なかなかの接戦である。

2ラップ目、野崎が第2セクションで2点の失点をする。野崎の気持ちが、これでまた引き締まった。そして実際には、この失点くらいでは、まだ野崎の優位は揺るがない。それでも、ライバルたちは野崎がすきを見せたときに備えて、がまんのトライを続ける。太一はついに2ラップめにオールクリーンをたたき出した。2ラップを終えて減点8。黒山は最終セクションで1点をつき、太一とは同点で2位につける。野崎は野崎は第2の2点のみでトータル3点。まだトップの座は安泰だが、3ラップ目になにかが起きる可能性はある。

渋谷は全部のセクションをクリーンするつもりで走ったが、第6で5点。追い上げ中の5点は痛かった。トータル14点。しかしさらに悲惨な状況となったのが小川友幸だった。エンジンが変調し、突然エンストする。ついにセクショントライ中にもこの症状が発生し、クリーンセクションで5点をとると、1ラップ目と同じく、最終セクションでも5点。ライバルがオールクリーンに近い追い上げをかける中、1ラップ目より減点を増やす結果となってしまった。ここまでのトータル17点は、小川毅士と同点である。成田は2ラップ目も1ラップ目と同じく減点11。トータル22点と、毅士にやや離されて2ラップ目を終えている。

そして3ラップ目。野崎は今度も第2セクションで減点をとった。たった1点だが、野崎はとうとう3ラップのどのラップでも、オールクリーンはできなかった。しかしトータル減点はたったの4点。結果的には、黒山との一騎打ちは、1ラップ目の第1セクションで、黒山が5点をとった時点で、決着がついてしまっていたわけだ。

黒山は、3ラップ目にも1点の減点を加えて、トータル減点9。ちょうど、最初にとった5点減点分だけ、野崎より減点が多い。連勝記録がストップ。そしてシーズン全勝もならず。2年連続野崎が最終戦を制した。しかし黒山は、意外にさばさばと2位となる最終戦のゴールに飛び込んできた。

3ラップ目には、渋谷がオールクリーンをした。これで渋谷は3位に浮上した。2ラップ目にオールクリーンした太一は、なんと3ラップ目に二つの5点をとって、トータル18点と後退してしまった。その太一にさらに2点遅れて小川友幸。友幸は、3ラップ目にさらに減点1を3つ加算して、序盤のトップ争いから、最後には5位の座に落ちついてしまっていた。

6位は、最後にラップ減点4と貫録を見せた成田匠が入った。小川毅士は3ラップ目に減点13をとって、成田に4点差。僅差の接戦だった2位争いは、終わってみれば2位黒山から7位毅士までは21点の開きになっていた。

シーズンを終えて、チャンピオンは黒山健一ですでに決定しているが、ランキング2位争いは接戦だった。結果、同点ながら2位入賞回数の差で、田中太一がランキング2位。小川友幸が3位。さらに1点差で渋谷勲がつけることになった。3戦のみ出場で1勝をあげた野崎は、ランキング8位となった。

【優勝した野崎史高のコメント】

「1ラップ目から調子は悪くなくて、最初のラップを1点で回れました。ほとんど最初にトライしていたんで、最終セクションの1点は、まぁしょうがないかなというところですね。ちょっとラインもミスしたし。ただ、第2でポカミスをやって、これで同点くらいになっちゃったかなと思いました。みんな、おんなじペースで走っていると思っていたんです。でも自分がこれ以上減点をとらなければ、勝負もなんとかなるとは思っていました。崩れずに、3ラップを走りきろうと思って、トップならそのポジションを守ろうと思って、それでちょっと早まわりしたんです。それが結果的によかったんですね。菅生は、この会場が好きとか、このセクションが好きということはないんですが、なぜか相性がいいみたいですね。今年出た全日本の2戦はともに2位だったんでそれでくやしかったから、今回はぜひ勝ちたいと思っていました」

【黒山健一のコメント】

「今日は1ラップ目の第1セクションで5点をとって終わりました。マーカーに触っての5点でしたが、あれはまったく不注意の5点。今日は序盤に、なぜかわかりませんが、集中できていなかったです。だからそこからは気持ちを切り替えて、なんとしても2位になろうと走りました。だから今日は、2位になれてよかったです。今日は、長い試合をした気がします。史くんのことは気にしていませんでした。勝つときもあれば、負けるときもあります。勝ち続けるというのは、オールクリーンをするのと一緒で、なかなかできない、むずかしいことなんですよ」

【渋谷勲のコメント】

「今日は1ラップ目にも2ラップ目にも5点をとってしまってしまいました。試合中は、野崎君を基準に考えていて、他のみんなもそれくらいの点数で回っているものと思っていましたから、5点をいくつかとったところで、もう完全にあきらめていました。でも終わってみたら3位。本当に、集中するのがたいへんな1日でした。ようやく2〜3ラップ目には集中できるようになって、最後はなんとか10セクション全部をクリーンもできました。でも、集中できるまでに、時間がかかってしまいましたね」


地元を制した小野貴史
国際A級
最終戦に、大きなドラマが待っていた。今シーズン、初優勝し、さらに表彰台をのがしたことがない三谷英明(ホンダ)は、坂田匠太(ガスガス)に7点のポイント差をつけて最終戦にのぞんでいた。坂田が優勝しても、三谷が3位以内に入ればチャンピオンは決定である。ここまで、三谷は最悪の成績が3位だから、三谷のタイトル決定はまちがいないものと思われていた。坂田陣営も「三谷さんによっぽどのことがない限りうちのタイトルはないから、あきらめている」と表面上はタイトル争いを放棄しているような雰囲気だった。

さらに坂田は、1ラップ目に3つの5点をとって、1ラップ目の順位は12位。これでは、とてもタイトルが狙えるポジションではない。しかし一方、三谷もまた思わぬ順位に低迷していた。坂田ほどではないが、二つの5点と二つの減点1で、1ラップ目の順位は8位である。それでも、このままのポジションが維持されるなら、タイトルは三谷のものである。

坂田は、2ラップ目、3ラップ目と、追い上げを開始する。12位から、2ラップ目には7位、そしてついに、3ラップ目には2位までポジションを復帰させる。一方三谷は、2ラップ目には減点6で5位までポジションを浮上させたが、3ラップ目に再び減点11をとって8位に後退。チャンピオン争いは、2点差で若い坂田のものとなった。

この試合、優勝したのは地元の小野貴史(ホンダ)。小野は、これが初優勝だが、去年もここの最終戦では4位となるなど、地元での優勢は板についたようだ。しかし本人はまったく戦況を把握しておらず、試合が終わって、勝利に驚いていた。

【優勝した小野貴史のコメント】

「今日は早まわりをしていたので、よくも悪くもなく、こんなものかなと思いながら走っていました。終わってからリザルトを見ると、1ラップ目に4位となっていたので、3ラップ目にちょっと失敗もあったので、6位くらいまでに入っていればうれしいなと思いました。そしたら、優勝しちゃっていました。長いことやっていましたが、ようやく優勝できました。次は、地元だけじゃなくて、どこでも勝てるようにならないといけませんね」

【チャンピオンを決めた坂田匠太のコメント】

「今日は三谷さんのことは気にせず、一度も試合中には会いませんでした。1ラップ目が悪かったので、だめかと思ってまわりを見ないで集中しようと思って早まわりをしました。今日は高いステアがぜんぜんだめでしたね。1ラップ目に悪かったのを挽回しようと思って、思いきり突っ込んで5点。2ラップ目はこの5点だけでしたけど。来年はスーパークラスを走りますけど、楽しみというより、今は不安も大きいです」

【ランキング2位に落ちついた三谷英明のコメント】

「今日は、自分的にはそんなに悪くはなかったんだけど、5点ひとつが致命的というセクション設定でしたね。ステアで失敗してリズムが崩れて、超神経戦でふんばろうと思ったら、今度は力がはいって手も足もつりはじめて、たいへんでした。チャンピオンはとりのがしましたが、やっぱりA級チャンピオンは坂田くんのようなこれからのライダーがなったほうが、ふさわしいですよ。坂田くんには心からおめでとうと言いたいです」
 

優勝した辻真太郎
そしてチャンピオン獲得
国際B級
高橋由(スコルパ)と辻真太郎(ホンダ)の若手同士のトップ争いが続く国際B級。最終戦を前に、両者はランキングポイントにして2点差。このところ、ふたりは常に表彰台に乗っているから、今回の戦いで上位につけたほうがチャンピオンとなる公算が強い。

1ラップ目のトップは高橋。辻は4点差で4位につける。ここまでは、東北勢代表の高橋に分があった。しかし2ラップ目以降、辻はすべてのセクションをクリーンで走り続ける。結果、辻のトータル減点は6点。高橋は2点、2点、5点と細かく減点して3位となった。2位は前回中部大会に続いて2位となった東北の森岡慎哉。IBでは、東北勢の元気が見られた2005年シーズンだった。

【優勝した辻真太郎のコメント】

「調子は、よかったといえばよかったです。でも1ラップ目に5点をとってしまって、こりゃ、今日はだめだなと思って、あきらめて練習気分で走りました。表彰台くらいには乗れるかなと思っていましたが、優勝していたなんて、最後までわかりませんでした。チャンピオンもうれしいですが、それより2ラップ目と3ラップ目にオールクリーンできたのがうれしいです。でもやっぱり一番うれしいのは、今日優勝できたことです」

 


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