写真&レポート
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安定した強さ
黒山健一の勝利
2位になった渋谷勲
3位の小川友幸
国際A級スーパークラス
 6月12日。トライアル全日本選手権第4戦。第3戦関東新潟大会が昨秋の地震の影響から開催を見合わせたため、しばらくインターバルを置いての、今年3回目の全日本大会となっている。台風4号の襲来や、前日までの雨の影響が懸念されたが、当日はすっかりいいお天気に恵まれた。降り注いだ雨による湿気が残っていて、蒸し暑い1日とはなったが、沢筋に設けられたセクションは、時おり涼しい風も吹き、山登りの暁には、ちょっと快適な観戦ポジションを得ることができた。ライダーのほうは、全日本一番という体力勝負のコースで、雨上がりを懸念して、国際B級は当初の3ラップの予定から2ラップに短縮されたが、それでもライダーは充分な走りごたえを感じていたようだ。

黒山健一選手によると、前日に下見をした時点で、目標減点数は15点だったという。1ラップあたり、5点というわけだ。この目標は、ほとんどオールクリーンをする勢いで走らなければ達成できない。雨を想定したセクションは、結果的にはクリーン連発でおかしくない設定となったわけだが、しかしそこはむずかしい地形の猪名川サーキットトライアル場。ひとつまちがえれば岩盤から転げ落ちて5点というおそれが多い。

第1セクション。華麗にクリーンしたのは成田匠。てきぱきと下見をして、スピーディにセクションインをするのが成田のトライアルの特徴だが、スピーディで美しい走りも大きな魅力。そして、こんなふうに見事なクリーンを見せることも少なくないので、シリアスにトップ争いを展開する面々には刺激を与えることも多い。

沢筋の岩盤を次々に走破していくと、第4セクションは沢の横の斜面の岩盤を越えていく難セクション。この岩には、日本のトップライダーが次から次へとはじきかえされていく。ここをクリーンしたのは、わずかに黒山健一ただ一人だった。これが、まだセクション4つを経過しただけの段階で、この日の試合の流れを予感させるものとなった。

黒山が、唯一乱れを見せたのは、国際B級のトライがない第7セクション。国際A級と、まったく同じラインを走るものだったが、ここはごろごろ石の敷き詰められた沢登り。黒山はなんと、崩れたごろごろ石にタイヤをとられ、後退してしまって5点となってしまった。しかし黒山の5点は、結果的に3ラップを通じてこれひとつだけ。1ラップ目にタイムオーバーの1点減点を加算したが、それでもライバルの追撃をまったく恐れることなく、12セクション3ラップを走りきってしまった。

2位争いは、今回は渋谷勲と小川友幸の二人の闘いだった。1ラップ目は、小川に分があるように見えた闘いだったが、旗門の第4セクションで3ラップとも二段岩盤を登れずで5点となった他は5点がなかった渋谷に対して、小川はそこここで5点があった。中には、小川以外のトップ6が、一度も足をつくことのなかった土のすり鉢斜面を登っていく第9セクションで5点と、信じられないような減点もあった。小川には、1ラップ目に国際B級の渋滞に巻き込まれての3点のタイムオーバー減点もあったが、終わってみれば、渋谷とは14点の大差で上位二人にやや水をあけられての3位に落ちついた。

いつもこの3人と熾烈な争いを展開するここまでランキング2位としていた田中太一は、今回は尋常ではないミス続きで、なんと1ラップ目は9人中9位の最下位となった。試合を数日後に控えてエンジンを壊してしまい、今回はライダーになじんだエンジンを失ってしまったのが大きな痛手だったが、これですっかりペースを崩して、今回はまったく精彩なく試合を終えてしまった。6位を得たのは、太一本来の実力からするとなんとも不本意だが、1ラップ目の状況から見れば、よく追い上げたといっていいだろう。

太一を抑えて4位と5位を得たのは、ベテランとルーキー、成田匠と小川毅士だった。成田は、随所でスピードのある切れのいい走りを見せるが、全部で10個もの5点があって、1ラップ目こそ井内将太郎、小川毅士に次いで6位だったのだが、2ラップ目以降抑えるところを抑えて10点近く減点を減らして毅士には10点以上の差をつけた。小川友幸との差は30点近いので、今回は孤高の4位ということになった。

毅士は背中の負傷もだいぶ回復して、さらにもてぎでの世界選手権を経験、その前後には小川友幸や世界チャンピオン、藤波貴久ともいっしょに練習する機会に恵まれたということで、一皮むけた印象もある。今回のリザルトは毅士の定位置ともいえる5位だったが、今後に期待が持てる一戦となった。

1ラップ目には4位だった井内は、やはりまだ体力的に蓄えが足りないか、2ラップ目以降に減点を増やして7位。ランキングでも、負傷を引きずって第1戦が再開だった同点ながら毅士の追撃を許している。
マシントラブルを起こした尾西和博が3ラップ目の中盤以降を全部5点として走りきって最下位。田中善弘が8位で試合を終えている。

【黒山のコメント】
「下見をした感触で15点以内という目標がありましたから、それを守れなかったのはちょっと不本意ではありますけど、ライバルの動向を気にすることなく勝利することができましたから、よかったです。国際A級と同じセクションだったがらがら石の第7セクションで5点というのが痛かったですね。みんなの走っているラインをはずしてど真ん中をいったんですけど、やっぱり端のほうを走っていけばよかったですか。これがなくて、もうひとつふたつ足つきを減らせば目標達成でした。全日本は3戦3勝しましたけど、今回は父が負傷して二郎くんとふたりでの参戦となりましたが、父親抜きで全日本で勝利したのははじめてなんです。その点が、今回はうれしかったポイントです」

【渋谷のコメント】
「うーん、なんかイマイチですね。第4セクションを一度も登れていないのがくやしいです。練習なら、絶対失敗しないようなところなんですけど、試合だとこうなっちゃうんですね。この後、フランス大会とイタリア大会に参加してきます。その成績がもしもよければ、次の中国大会は欠席して世界選手権参戦を続けるという可能性もあるんですが、どうなるでしょう? まずは、去年のヨーロッパは散々でしたから、今年はちょっとがんばってきますよ」

【小川友幸のコメント】
「悪くはなかったと思うんですが、ありえない5点がいくつかあって、勝負をのがしてしまいましたね。1ラップ目2ラップ目の健ちゃんの減点は現実的なものなので、これについていけるような走りをしなければいけません。強敵ですが、そうしていくことでチャンスも生まれると思いますから、次あたりこそ、がんばらないといけません。世界一流の相手に対して、こちらはまだマシンの開発を進めている途中ですから、苦しい闘いなのは確かですけど」

 
 

初勝利。坂田匠太

国際A級
  ついに、ルーキーが初優勝した。第1戦三谷英明(ホンダ)、第2戦小森文彦(ホンダ)と、国際A級スーパークラス経験者たちが勝利してきたこのクラスだったが、3人目の勝利者は坂田匠太(ガスガス)だった。

1ラップ目は、今年は善戦参加を見合わせている白神孝之(シェルコ)だったが、1点差で三谷、さらに1点差で坂田となかなかの接戦だった。しかし2ラップ目、三谷も減点を減らしてきたが、その2ラップ目の三谷が9点なのに対して、4点で回ってきたのが坂田だった。3ラップ目は大きく崩れたと本人は告白するが、坂田を追うべき三谷も3ラップ目に減点を増やしたので、2ラップ目のアドバンテージを生かした坂田の勝利が決まった。

ランキング争いも、三谷、小森のトップ争いに、坂田が参加してきたかたち。1ラップ目にトップだった白神は、タイムオーバー減点が7点もあって、結果は5位に落ちついている。」

【優勝した坂田のコメント】
「今日は2ラップ目がよかったですね。1ラップ目と3ラップ目は、まだまだでした。1ラップ目の第1セクションは5点ですし。試合の始まりは、いつも緊張しちゃって、だめなんですよね。ぼくの第1セクションって、クリーンしたことはないんじゃないですか? 一度勝ったらまた勝ちたいですけど、ランキングでトップに立ってみたいですね」
 
 

今季2勝目の高橋由
国際B級
 前回欠場だった高橋由(スコルパ)が今回も勝利。2戦に出場して勝率は100%だ。ランキングトップの小倉昌也(ホンダ)は、今回はまさかの29位で無得点に終わり、ランキングも1戦を欠場した高橋がトップに出ている。2位は地元の若手、辻真太郎(ホンダ)。若手がトップ2を占めたのに対して、これ以降は中堅からベテランライダーが6位までの表彰台を占めることになった。今回は競技が2ラップとなったため、体力勝負となると難の出てくるベテラン組にチャンスがあったのではないかというのは、3位に入った荒木隆俊(ベータ)の考察だった。

前回勝利の川崎亘は今回は4位に入り、ランキングでもトップの高橋に3点差の2位につけている。国際B級は、まだもう一波乱、ふた波乱、ありそうだ。

【優勝した高橋のコメント】
「疲労もなかったし、セクションは楽しかったです。今回のセクションでは、コンクリートをどかんとあがる12セクションみたいなのが好きですね。次回中国大会は遠征できると思います。またがんばります」
 
 


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